岩井国臣の「劇場国家」!

  

F・A・ハイエクの「貨幣発行自由化論」

 ハイエクの序文

 これから紹介する一連の文書は、F・A・ハイエクの「貨幣発行自由化論」(1999年9月、東洋経済新報社、訳者は川口慎二)からの抜粋である。先に、その概要を知るために、訳者の「あとがき」を紹介したが、今回は、ハイエク自身が書いた本書の序文を紹介しよう。

 

 

 第一版序文(一九七六年)

 インフレーションを阻止するという技術的には最も簡単に実行可能な問題について、政治上では実行可能な解決策を見出す見込みがない。

 大きなインフレーションにより損害と苦痛が生じるということだけではなく、長い間私が確信してきたことであるが、マイルド・インフレーションですら最後には不況と失業とを循環的に発生させるものである。そしてこれらの不況と失業は自由企業制度に対する非難を正当化する根拠とされてきたものであるから、もし自由社会が存続させられるべきであるというのであれば阻止されねばならないという理由である。

 政府から貨幣発行の独占権が奪い取られるべきであるという提案をさらに追求することにより、最も魅力のある理論的展望が開かれ、そしてこれまでけっして考えられたことのない制度が可能であることが明らかになった。一国はそれ自らの固有で排他的な通貨をその政府によって供給されねばならないという信念、この広くしかし暗黙のうちに受け入れられている信念から、人々が首尾よく解放されるや否や、これまでけっして検討されなかったあらゆる種類の興味深い問題が発生することになる。結果はこれまで全く探究されなかった分野への進撃であった。この短い著書においては、私はこの分野を初めて踏査した間にえたいくつかの発見を示すことしかできない。私はもとより十分に承知していることではあるが、ここでは複雑に絡み合っている新しい問題の表面のみを扱ったにすぎず、また多数の並行通貨の存在が引き起こすであろう問題のすべてを解決するまでには依然として全くいたっていないのである。

 市場秩序が循環的に不況と失業の時期に見舞われやすいということ---これは市場秩序の重大な欠陥であり、この秩序への非難を正当化する理由とされてきたものであるが---これは貨幣発行がずっと昔から政府に独占されてきたということの結果である。

 

 一九七六年六月三〇日

 ザルツブルグにて

 F・A ・ハイエク

 

 

 

 第二版序文(一九七七年)

 

 経済理論家または政治哲学者の主要な仕事は、今日政治上では不可能であることが政治上で可能になるように、世論に影響を与えることにあるべきであり、それゆえに、私の提案が現在においては実行不可能であるという反対意見は、私がこれらの提案を発展させるのに少しも妨げとはならない。

 貨幣の分野では、他の者がよりうまくできるかもしれないことを行おうとするのを政府が決して邪魔してはならない。

 

 フライブルグ・イム・プライスガウにて

 F・A ・ハイエク

 

 

 次は、「貨幣創造についての政府特権の起源」です。

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