風土工学を取り込め!

 

 

 「杜のくに・・・日本」、・・・・これが、これからあるべきわが国の「国のかたち」ではないか。わが国独自の国柄である・・・この「杜のくに」の思想と感性を大事にし、そういう地域づくりを進めていきたい。そのためには、私たち土木技術者は、今こそ哲学者の語る言葉にも耳を傾け、平和の哲学を語り、地域づくりの哲学を語らなければならない。そして、土木計画学の新しい地平を切り開いていかなければならないのだ。

 

 土木研究センター風土工学研究所所長の竹林征三さんの卓越した識見と精力的な努力によって、「風土工学」という新しい工学ジャンルが創造された。「風土工学」の草分けは京都大学名誉教授の佐々木綱先生である。竹林征三さんは、これに広島名誉教授の長町三生先生の「感性工学」をドッキングさせ、新しい風土工学の体系を創造されたのである。まだ、研究課題は少なくないと思われるが、この理論を適用することによりこれからの地域づくりに大きく寄与することが期待されている。何よりも実践的研究を重ねることだ。

 

 竹林征三さんは、風土工学の定義を、やや施設の設計に重点を置いて考えておられるようだが、私は、とりあえずPFIを念頭に置きながら、公共施設などの企画、計画、設計、施行、管理のそれぞれのレベルで、風土工学の理論を適用するよう挑戦して欲しいと考えている。

 

 

 さて、風土とは、竹林征三さんが「風土五訓」で言っておられるように、五感で感受し、六感で磨き、しみじみと判る・・・地域の個性、地域の誇り・・・それが風土である。そこに棲む人々意識により、或いはそこに訪れる「漂泊の旅人」の意識によりその光り方が違ってくる地域の個性、それが風土である。竹林さんは、鳳の羽ばたきと言っておられるのだが、・・・・・地域の人々の心を豊かに育み、地域の文化を育んでくれるもの、それが風土である。悠久の時の流れの中で形成され、その地域の人々の自己を形成するもの、それが風土である。

 

 このように、風土は、地域の人々の深層心理と深く係わっているのであり、いいかえれば、地域の人々の自我そして自己を形成している。・・・・・とすれば、虚心坦懐に地域の人々の意識を探らなければならない。「地域の人々をして語らしめる」ということが、・・・・基本的に重要になってくる。これはとりもなおさず川喜多二郎さんの「KJ法」だ。「風土工学」はここで「KJ法」と繋がってくる。

 

 「自我」ないし「自己」というものを理解するには、河合隼雄さんの「アイデンティティーネットワーク」という考え方がいいだろう。また、日本人の「自我」とその特質を理解するには、老松克博さんの「漂泊する自我」という考え方がいい。ここで、「風土工学」は、深層心理学と繋がってくる。

 

 さらに、竹林さんは、地域が発するリズム、・・・それはいうまでもなく、人々の感性を揺り動かすもとになっているのだが、それが風土であるとも仰有っている。

 お判りにくいかも知れないが、哲学的いえば、「地域のリズム」・・・それが風土である。中村雄二郎さんの「リズム論」、・・・・中村哲学でいうところの「共振する世界」・・・その「トポス」が風土である。私は、ここで「風土工学」は「中村哲学」と繋がってくるように思う。

 

 

 土木工学は、本来、住民がその地で心豊かに生活し豊かな風土を作り上げていくための工学である。土木工学はその原点に立ち返らなければならない。土木工学、それはいうまでもなく「シビルエンジニヤリング」である。シビル・・・つまり文化をつくるための技術である。本来はそうであった。その原点に立ち返らなければならない。

 梅原猛さんがいわれるように、これからわが国は、縄文文化に想いをはし、「森の思想」を近代風に育てていかなければならない。梅原猛さんのいわれる「循環と共生」だ。「風土工学」は、ここで梅原哲学と繋がってくる。

 

 

 私の提唱する・・・・個性ある地域づくり、共生の思想にもとづく地域づくり、川童の棲む川づくり、巨木の町づくり、怨霊、鬼、妖怪の棲む町づくり・・・・これらはとりもなおさす風土工学の問題といったらよかろう。風土工学の新たな展開を心から願い、そして「杜のくに・・・日本」の幸せを願いつつ、明日のよろこびを夢見ることとしたい。