間伐材利用促進基金
 
2008年8月10日
国土政策研究会
会長 岩井國臣
 
 先に述べたように、 早急に奥山を本来の森林に改修しなければならない。もちろん低林の人工林も萌芽更新のできる広葉樹に逐次切り替えていかなければならないので,これも費用の問題があって,そう簡単なことではないのだが、本来の森林に戻すことを考える場合,やはり本命は奥山だろう。問題はその費用負担の問題である。議論としてはいろいろあろうが、ともかく急いで実行に移していきたい。当面実行可能なことをやっていく場合,私は,現在の間伐に対する助成制度をもとに何か追加的な方策を講ずれば良いのではないかと考えてい
 未間伐の林において,間伐を進める場合,先に述べたように,切り捨て間伐ではなく,搬出して間伐材を資源として利用しなければならない。それが原則だ。しかし,その原則を実行しようとする場合,搬出費用に補助金が出ないので,それをなんとかしなければならない。零細山林地主は切り捨て間伐ですら自己負担ができない状況にあるので,伐採にかかわる零細山林地主の自己負担分の費用と全体の搬出費用の合計が,人工林を本来の森林に改修していく場合の費用不足額である。これを法律制度を改正して手当てするのが本筋ではあるが,国も都道府県も市町村も財政難で金のない現在,私は,その見込みはほとんどないと考える。しかし,その金を用意して,間伐を進め,間伐材の利用を進めなければならない。どうするか。
 費用不足額を補うために,流域ごとに基金を作るのも一つの方策だと思う。基金方式だ。基金は流域の企業や個人から借金をして作る。そしてその基金は間伐した後の育成木が売れたときに借金した企業や個人に金利をつけて返済する。その返済は,森林組合から基金に金が入ったときに行われるので森林組合の信用が大前提となる。間伐は森林組合が行うので,基金と森林組合はある種の契約を結び,それにもとづき、森林組合から基金に金が戻るという訳だ。
 もう一つの方法は,現行の間伐補助に調整費をつけるという方式だ。調整費方式だ。林野庁が間伐の補助金をつける場合,国土交通省の国土計画局が、災害防止と生態系改善と資源活用の目的を持つ調整費を上乗せをする。すでに調整費制度があるので,財務省が了承すればすぐにでもできる。予算制度上の問題はない。
 さらに三つ目に考えられる方策は,河岸等災害防止上必要な箇所の改修を砂防事業でやるいう方策だ。治水方式だ。山腹砂防という事業手法があるので,必要な箇所を決定できれば予算制度上の問題はない。市町村が場所を特定し,現行の林や行政の中で,出せるだけ補助金を出す。しかし,どうしても費用の不足額が出てくるので,この治水方式というのは,その費用不足額を砂防事業で補完するというやり方なのだが,予算上の制約はないとしても、当然、財務省の了解がなければできない。
 
 私は,基金方式がいちばん良いと思う。私は、先にも述べたが、下河辺敦(あつし)の流域圏構想にもとづいて国土管理をするのが良いと考えており,山の管理も流域圏構想にもとづいて行うべきだと考えている。まず流域の市町村が管理できるかどうかを考える。流域の市町村で管理できない場合は,都道府県で管理する。都道府県で管理できない場合は,国で管理する。そして,国が管理する場合は,都道府県が応分の費用負担をし,さらにそれに応じて市町村が応分の費用負担をするということでなければならない。都道府県で管理する場合は,当然,市町村が応分の費用負担をする。現実はこういう制度になっていないので,いろいろ工夫が必要だ。具体的な方策としては当然現実を考えねばならないのだが,一応,本来あるべき姿を念頭に置いておくことが必要であり、本来あるべき姿からいえば,流域の市町村の責任は大きい。 そういう点から,私は,基金方式がいちばん良いと考える訳だ。
 調整費方式にしても、治水方式にしても関係省庁間の調整が必要であるし、国土交通省がその気になるか,さらには財務省が了解するか,ハードルが多すぎる。私の直感では,なかなか厄介である。基金方式というのは,過疎地域における第6次産業が誕生すれば,その育成を図るため,市町村とNPOがそういう運動を始めることができる。市町村次第というところがあって,その熱意によって基金が誕生する可能性は十分あるのではないか。まずそういう運動を始めることだ。石橋を叩いては渡れない!
 
 間伐材の利用促進は,さる4月に「 森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法」という法律ができ、焦眉の急である。先に述べたように, 間伐材利用促進方策をいろいろと検討しなければならない。バイオマス発電、ペレット発電、木炭発電、水素発電などいろいろなビジネスモデルの検討が必要である。問題の焦点は、間伐材の買い入れコストである。「BWE」は、1立方メートルあたり3万円で買い取るのが目標だといっている。間伐材が建築材として高く売れれば何よりだ。また,最近は,炭の利用として,土壌改良材,水質浄化材,畜産用材,水産用材,健康材等々、用途拡大が研究されてきているので、将来,間伐材の買い入れコストがあまり問題にならなくなるかもしれない。しかし,今のところ,間伐材の利用は石油の代替エネルギーとして, バイオマス発電、ペレット発電、木炭発電、水素発電などに利用するのが本命であり,そのためのいろいろなビジネスモデルの検討を急ぐべきである。 となれば、やはり問題は間伐材の買い入れコストである。
 現在,建築材の場合,杉だと1立方メートルあたり5000円から1万円ぐらい、檜だと1立方メートルあたり18000円ぐらいで売られている。これぐらいで売れれば,手厚い補助金があるので,何とか赤字にならなくてすむ。小丸太だと1立方メートルあたり5000円ないし7000円でしか売れないので,その分、足が出るという訳だ。
 だから、私は、当面、補助金とそれを補完する「間伐材利用促進基金」をアテにして良いから、林業側は何とか1万円ぐらいで間伐材を売り渡せないか。製炭業側は、何とか1万円ぐらいで間伐材を買い取ることができれば、製材工場から出てくる端材とか、建設廃材とか、ダムにたまった流木とか、ただ同然で入手できるものもあるので,何とかビジネスとして成り立つのではないかと思っている。直感である。私の直感だから、あまりアテにならないので、その辺はよくよく検討しなければならない。地域によって違うだろうが、モデル地域でそれぞれどういうビジネスモデルを考えれば良いかということだ。市町村は必死になって地域にあったビジネスモデルを考えねばならないのではないか。国土政策研究会はその相談にのる用意がある。
 
 現在山は荒れている。山の管理は、やや極端な言い方だが、流域の市町村の責任である。山が原因で災害がひどくなろうが、それは流域の責任である。山の管理に熱心な流域は災害が少ないし、山の管理に熱心でない流域は災害がひどい。まあそういうものだ。