瀬田遺跡と等々力根遺跡 

 

 

 瀬田は、川幅の狭いところを意味し、多摩川に面した武蔵野台地の末端にある。世田谷区は、南北朝時代にできたといわれる世田谷郷に由来するようであるが、世田は瀬田、谷は開である。世田谷とは、浅瀬のある川の周辺を開発したところと意味かもしれない。

 丸子川が武蔵野台地の山ぎわを流れ、その山ぎわのやや奥まったところに瀬田遺跡がある。堂ヶ谷戸遺跡もそうであるが、丸子川に流入する小川の周辺は石器時代においても住みやすいところであった。やや高台は洪水の心配はないし、少し下に降りれば水が容易に得られる。昨日の雨で酒匂川の河原で数名の方がなくなっているが、大河川の周辺は突然の出水で危ないのである。大河川の周辺は、本来、住むところではない。

 堂ヶ谷戸遺跡は、地質学的な層位でいえば、第。層位から第ィ層位(1万2000年前から3万5000年前)までである。これに対し、瀬田遺跡は、第「の終わりから第ィ層位(1万4000年前から3万5000年前)である。堂ヶ谷戸遺跡の方が新しい生活層を含むが、瀬田遺跡は古さという点では多くの石器が出土しており価値が高い。しかも、第ィ層位には全国でも最大級の石斧が出土している。

 

 

 

瀬田遺跡第ィ層位(3万年前の地層)から出土した石斧

 

 いずれも砂岩を素材とした石斧である。写真中央の刃部先端の表裏に研摩が認められる局部(刃部)磨製石斧である。右は、全長2センチメートル、重量1870グラムで、全国でも最大級の石斧である。この瀬田が世田谷区発祥の地であることを物語っている。おおよそ3万年前のことである。

 瀬田遺跡の「場所」は、東急大井町線をはさんで後藤美術館の反対側にある。駒沢通りを駒沢公園から多摩川に向ってくると、環八の交差点が多摩美大であるが、それを突っ切ってなおも行くとやがて道路は坂を下りながら大きく左に曲がって東急大井町線のガードをくぐる。そのくぐる手前の右側・・・、瀬田1丁目2番地が瀬田遺跡である。その大きな茂みは現在空き地になっているので、そこが世田谷区発祥の地であるが故に世田谷区はそこを瀬田遺跡公園にすべきである。

 

それでは、この世田谷区発祥の「場所」を訪ねて、

散歩に出かけるとしようか。

そうしよう!そうしよう!

 

 

 

堂ヶ谷戸遺跡第・層位(2万7000年前)の石器

黒曜石はほとんど見られない。

 

 

 

 等々力根遺跡第ァ層位(2万8000年前)の石器

黒曜石はほとんど見られない。

 

 

 

瀬田遺跡第、層位(2万5000年前)の石器

 

黒曜石が多用され、石器総数の91%を占める。

ナイフ型石器の形態も堂ヶ谷戸遺跡同様

2側縁加工と部分加工の組み合わせである。

 

 

 

 先に述べたように、瀬田遺跡では、3万年前の地層から全国でも最大級の石斧が出土している。3万年前である。しかし、それからやや時代は下るが、量的には、等々力根遺跡第ァ層位(2万8000年前)から数多くの加工石器が出ており、黒曜石以前にもそれなりの加工技術があったことがはっきりしている。私の住んでいるこの瀬田や等々力は、多摩川に面し、谷沢川や丸子川などの支川が流入するなど水に恵まれていたので、石器人にも住み良い環境であったようだ。特に、等々力の滝は夏は冷たく冬はあたたかな水が湧出し、生活環境としては抜群の環境であったと思われる。石器時代は気温も低く、多摩川にもサケが大量に遡上していたものと思われる。

 かって、私は、「武家社会源流の旅」をこの等々力から出発したのであったが、今回の「古代社会源流の旅」もこの地(瀬田遺跡と等々力根遺跡)から出発するとしよう。この地では、3万年ほど前にはすでに人びとは石器文化をもって結構豊かな生活をしていたのではないか。私はそんな想像をしている。そして5000年ほどが経過し2万5000年前ごろになると、石器文化に急激な変化が起こる。八ヶ岳の大量の黒曜石が持ち込まれナイフ型石器などかなり高度な加工が行なわれるようになる。しかし、まだ湧別技法などという極めて高度な加工技術は日本列島のどこにも始まっていない。そういう画期的な技術革新が始まるのはずっと後のことであるが、2万5000年ほど前に八ヶ岳の黒曜石が関東平野に大量に持ち込まれているということは大変興味のあるできごとだ。八ヶ岳山麓から多摩川にかけての文化圏は、富士眉月弧(ふじびげつこ)文化圏と呼ばれるが、その源流に八ヶ岳の黒曜石がある。問題は、武蔵野台地に大量に持ち込まれた黒曜石が伊豆・箱根、伊豆諸島の神津島、栃木県高原山でなく、なぜ八ヶ岳のものなのかということである。この問題についてはおいおい勉強していくこととしたい。それでは、ともかく「古代社会源流の旅」に出かけるとしよう!

 

 

瀬田遺跡への散歩に引き続き、

等々力根遺跡を訪ねるとしようか。

そうしよう!そうしよう!