アナン国連事務総長が毎日新聞などに寄稿 「移民は経済成長の力」

2004.02.01 毎日新聞

 

 コフィ・アナン国連事務総長は、29日に欧州議会で行った演説に関連し、毎日新聞などに寄稿文を寄せた。抄訳は以下の通り。

 

 今後数年、数十年の欧州連合(EU)拡大にとって最大の試練の一つは、移民問題にどう対応するかということだろう。欧州社会がこの挑戦に立ち上がるなら、移民は社会を豊かに、強くするであろう。しかし、そうでなければ、生活水準の低下や社会の分裂につながるかもしれない。

 欧州社会が移民を必要としていることには疑いはない。移民がいなければ、間もなく25カ国に拡大するEUの人口は、現在の約4億5000万人から、2050年には4億人以下に落ち込むだろう。

 EUにとどまらず、日本、ロシア、韓国なども同じ行く末をたどる可能性がある。経済の縮小と社会の停滞とともに、就業者が不足し、サービスが行き渡らなくなるだろう。こうした人口統計的な問題を抱えていない国でも、移民は経済成長の原動力、社会ダイナミズムの担い手となる。

 人々が先進国で生活することを望み続けることは間違いない。不公平な今の世の中で、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国の多くの人々が、豊かな国では当然視されている自己改善の機会を奪われている。彼らは機会ある国での新生活を切望しているのだ。

 国々は、不法移民を食い止めるため協力する必要がある。しかし、不法移民対策はもっと広範な戦略の一部であるべきだ。国家は、合法的移住のための道筋を示すべきであり、移民の基本的人権を尊重しながら、その恩恵を生かす努力をすべきである。

 貧しい国々もまた、移民からの恩恵を受けることができる。移民たちは02年1年間に少なくとも880億ドルを途上国に送金した。その額は、途上国が開発援助として受け取った570億ドルを上回るものだ。

 各国は新参者を社会にどう組み込むかにもっと取り組む必要がある。移民をとけ込ませる創意に富んだ戦略があってはじめて、移民たちは社会を不安定にする以上に社会を豊かにする。

 何百万という移民たちが近代ヨーロッパ、全世界で遂げてきた多大な貢献を見落としてはならない。多くの移民が政治、科学、学術、スポーツ、芸術の分野で指導者になってきた。また、彼らなしでは、多くの保健制度は人手不足に陥るだろうし、多くの仕事は立ち行かなくなるだろう。移民は解決の一部であって、問題の一部ではないのだ。

 欧州の将来、そして人間の尊厳にかかわるすべての人は、移民を社会問題のスケープゴートにしようとする傾向に対し、断固たる態度を取るべきである。移民の大多数は勤勉で、勇敢で、決然としている。彼らは「ただ乗り」などではなく、公平なチャンスを求めているのだ。犯罪者でもテロリストでもなく、法を守ろうとする人々だ。彼らは自らのアイデンティティーを維持しながら、社会にとけ込みたいと願っているのだ。

 21世紀において、移民は欧州を必要とし、欧州もまた移民を必要としている。閉ざされた欧州は、よりみじめで、弱く、貧しく、年老いたヨーロッパになるだろう。欧州が移民に正当に対処するなら、開かれた欧州は、より公正で、豊かで、強く、若々しいヨーロッパになるだろう。

【訳・前田英司】



劇場国家にっぽん ―わが国の姿(かたち)「あるべきようわ」―
Iwai-Kuniomi