79 山の神

 

山寺には昔、七つの院の名があって、その院の名が部落名になっているが、そのいずれにも山の神を祭る万年堂があり、小さな自然石が神の依代(よりしろ)になって祀られている。

 

芦沢院には六カ所、千手院には二か所、其他の部洛には各一か所の計十二か所に祀られている。

 

大祭は旧二月と十月の二日で、各部洛とも契約(戸主会)があって、重要問題はこの会で議決される。ただし、死火、産火の者はその席に列することは許されず、勝手(台所)に据って仰せ渡しを聞かねばならない。

 

当日山の神に供えるものは神酒や御供えは勿論であるが、特別なものとして、米の粉で粘って作った男根、女陰、斧、鋸、山刀、鎌を供えることである。

 

この日は山の神が木の数を調べる日であるからと言って決して山には入らない。もし山に行くならば必ず神罰を受けるとされている。

 

さて、山の神については異説もあるが、当地では甚だ醜い女神であるとされている。それは主婦(妻君)をへりくだって言うとき、山の神と呼び、また春の彼岸前後に山稼に行く時は、木で男根を造って神前に供えて行く地方もある事からも女神であることがわかる。

 

また、この神は冬は山の神であり、夏は里に下りて田の神になるとも考えられている。