川のキーパーソン

 

TALK&INTERVIEW
 第3回 「座談会:わが国のエコロジカル・ネットワーク」

「エコロジカル・ネットワーク」の実現は、わが国にとって最大の課題のひとつと、私は訴え続けてきた。それが今回の座談会につながったと言っていい。― 岩井國臣 ―

【座談会出席者】

(財)日本生態系協会
会長 池谷 奉文氏
同 理事 堂本 泰章氏
同 主任研究員 川池 芽美氏
川のおじさんこと
参議院議員 岩井 國臣

写真右より
(H18.1.16 国会図書館会議室にて)


イントロダクション

(財)日本生態系協会
川のおじさんのエコロジカルネットワークふくめ、環境に関する発言記録

  第142回国会 国土・環境委員会 第3号



■岩井:
 池谷さん達がエコロジカル・ネットワークを提唱されてからどれくらいになりますか?


川池芽美さん
▲川池芽美(かわいけ めぐみ)氏
(財)日本生態系協会 生態系研究センター

■川池: 10年以上にはなります。

■池谷: 彼女が今、具体的に国土交通省の方とエコロジカル・ネットワークを担当している川池です。

■川池: はじめまして、川池と申します。エコロジカル・ネットワークの図面 や解析などを担当しています。よろしくお願いします。

■岩井: 川池さん、よろしくお願いします。まだ、どうなるかわかりませんが、国土づくりというか、国づくりというか、一つの曲がり角、変節点に来ているように思います。一つは「国土総合開発法」の一部改正というのがありました、今までは「全国総合開発計画」で、おこなってきたわけです。田中角栄の日本列島改造の頃が一次です。それから二次、三次、当時下河辺淳さん(元国土庁事務次官)が言われた流域圏構想みたいなのもありました。それでずっと五次まできました。それが先行きが不透明になってきたといいますか、お金がなくなってきたのもあるんでしょうが、もう、やめているわけです。それでは、ちょっと拙いんです。そういう長期ビジョン、国家百年というものがなければいけないでしょう。そういう議論がありません。国づくりや国土建設についてのビジョンがないというのはほんとうに拙いんです。

 それで去年の通常国会で、当時の国土計画法の担当の人たちが頑張って、「国土総合開発法」の一部改正ができたわけです。一部改正といっていますが、これは全面 改定なんです。開発という言葉はもう外れて、国土形成、新しい国土形成計画法と呼ぶことになり、それに続いて、できる計画も国土形成計画ということになりました。そういうことで、まあ、様変わりです。一つの変化点というか、エポック・メイキングなことなんです。

 もう一つは道路特定財源の問題がありまして、これの一般財源化の問題もあるわけです。要するにガソリン税、東京などの道路特定財源です。それらの税収のほうが大きくなっているわけで、公共事業がシーリングになり、他のものとの横並びがあります。従って、道路特定財源があるので道路だけ事業を伸ばそうというわけにはいかないようになっており、つまりオーバーフローの問題が出ているわけです。要するに、事業費が抑えられていて、入ってくる収入のほうが多いという問題です。

 今はどうしているかといいますと、本四架橋の借金がありますので、それの返済に使っているわけです。それが平成18年度にだいたい終わります。それで、19年度から、はて、そのオーバーフロー分をどうしますか?というので、財界といいますか、トヨタその他自動車産業、あるいは石油業界などで税率を下げてくれという話があります。今は道路整備を急がなきゃならないということで、暫定税率と称して、特別 に税率を本来の倍くらいにしていますから。それを、本則に戻してくださいということです。

エコロジカル・ネットワーク(ビオトープネットワーク)
 生物の多様性の確保や生態系の保全・回復を目標として、生物生息空間である緑(自然環境)のエリアを量的・質的に確保するとともに、それぞれの空間相互を生物の移動を容易にする緑の回廊(生態的回廊)でつなげ、地域レベル、広域レベル、国土レベルのネットワークを形成すること。
パンフレット「人と自然の美しい共生 エコロジカル・ネットワーク」
 (国土交通省河川局河川環境課)


韓国の清渓川再生のアイディア、発信元は日本!?

 しかし、今、こうした税率を下げる状況にはないんです。なぜなら、全体的に収入が減っていますので、大蔵省、今の財務省ですがそういう税率を下げる気はないんです。小泉さんもないわけですね。そうしますとオーバーフローするわけです。そこで、そのオーバーフロー分を特定財源、道路に特定して使うのではなく、一般 財源化しようという話があり、これについて私達は反対しているわけです。さて、どうなるかわかりませんが、一般 財源化してもいいんですが、こういうところに使いますよという別の事業を作り出せばいいのではないか、それの一つとしてたとえば、日本橋の首都高速道路移設案の参考になったという・・・。

■池谷:  韓国の清渓川(チョンゲチョン)ですか。

■岩井: そうそう、清渓川(チョンゲチョン)みたいに。日本の首都高速は東京オリンピックの時に、もうとにかく「急げ」ということでバーッとやったわけです。それは致し方ない状況ではあったのですが、今となっていえば景観的にも、川を活かすという意味ではいかにも拙かった。私なんかもそれを言っているわけです。あれは、扇さんが大臣の時に言い出したんです。それから元東大教授(現在武蔵工業大学学長)の中村英夫さんの提言もあったので、小泉総理も、先般 、首都高の撤去を言い出しましたね。今後どうなるかわかりませんが・・・・・。

■池谷: 行き過ぎだという意見もありましたね。

■岩井: 確かに他にもやるべきことはいっぱいあるんですが、こういうことも、私は必要だと思います。やっぱり日本の美しい国づくり、それから生態系に配慮した国づくりというのは大事なことなんです。それで、エコロジカル・ネットワークということも、私はいろんな人にアピールしてきまして、なんとかそれを少し実現の方向に持っていけるのではないかという感じはしています。生態系協会では、エコロジカル・ネットワークを言い出されて以来いろいろやっておられるということですから、それを少しアクセルを踏んでやっていただけたらいいんじゃないかなと思っているんです。

清渓川復元事業(Seoul Metropolitan Goverment)
研究レポート/躍動の都市、ソウルを行く第3回:清渓川復元事業(みずほ情報総研)
小泉首相の日本橋に架かる首都高撤去提案
2005年12月小泉純一郎首相は、奥田碩日本経団連会長、作家の三浦朱門氏、伊藤滋早稲田大教授、中村英夫武蔵工大学長ら4人の有識者を首相官邸に呼び、東京・日本橋の景観を美しくするため、橋の上をまたがり、川に沿って走る首都高速道路の移設を検討する有識者会議を設ける考えを明らかにし、協力を要請。韓国の清渓川(チョンゲチョン)景観改善が見本とされている。有識者らによると、首相は「私が辞める(2006年9月)までに報告書を出してほしい」と期限を付けたという。現在の日本橋は明治44年(1911年)に架けられ、99年には重要文化財に指定されている。日本橋の上の首都高移設については、すでに国土交通 省が03年8月から東京都や学識者による「みちと景観を考える懇談会」を設けて検討を続けている。
中村英夫
武蔵工大学長(土木工学専攻)、 高速道路の権威


■岩井: 生態系ということをいち早く言い出されたのは池谷さんですので、今日は、エコロジカル・ネットワークというものについて、お話いただきたいと思います。まず、なぜ必要なのか?です。これは、もの凄くお金がかかります。今はもう人工造林がもの凄く増えて、しかも、川があり、道路があり、鉄道があり、緑が切れていますから、山も分断されていて、ですから、エコロジカル・ネットワークと言ってもそう簡単な話ではないはずです。「本気で日本としてやるのかどうか」。なかなか難しいん問題ですが、これは絶対やらないといけない・・・・と。池谷さんあたりはそう思っているのに違いないのでは・・・・と、私は見ております。

池谷奉文さん
▲池谷奉文(いけや ほうぶん)氏
(財)日本生態系協会会長/ (財)埼玉県生態系保護協会会長/ 国土審議会特別委員/自然再生専門家会議委員 ほか

■池谷: お見通 しのとおりです。

■岩井: そのあたりからまず、ちょっとお話をしていただけせんか?

■池谷: わたしどもも、「美しい国をつくるシンクタンク」との想いで活動しています。先ほど韓国の清渓川(チョンゲチョン)の再生の話が出ましたが、川の自然再生は、実は私ども(財)日本生態系協会でもあれよりずっと以前から提案してきたアイディアです。

■岩井: ほおお。

■池谷: 協会では、毎年韓国から、かなりの訪問を受けていますが、チョンゲチョンの復元に大きく関わっている市民団体の方々もよく訪問に来られます。その際には、もちろん川の自然再生の話をしていますし、そのアイディアが盛り込まれている協会の出版物である『ビオトープ・ネットワーク1』なども贈呈しております。これがありがたくも、韓国では一部翻訳され、活用されているそうなのです。そんななか、今のソウルの市長が、「これはいい」と目にとめてくださったのではないかと自負しています。

■岩井: そうですか。発信元は日本なんですね。

■池谷: ありがとうございます。僕らに言わせると、日本橋を取っ払うというのは、まったく二番煎じだなと感じます。せっかく日本で僕らが言っていたのにね。本当は日本の道路関係にあれくらいの発想はなければならない。うちの職員を連れて、昨年の11月に清渓川(チョンゲチョン)に行きましたけれど、我々プロの眼からするとまだまだ、もっと良いものができるはずだと思います。日本だって、もっといいものができるはずです。韓国がアジアに先駆けて進めたことは大変良いことだと思います。むしろ、国際的には日本の道路関係がちょっと遅れたなという感じは否めません。前回も道路局長さんにお会いしたけれど、なかなか動けないんですよね。

■岩井: それは何と言いますか・・・・、局長は理解はあるんです。理解はあるんですが、まわりが、やっぱりそういうようになっていませんので、ちょっと自分だけ突出するわけにいかないというところはあると思うんです。

(財)日本生態系協会の出版書籍(インデックス・バーの「出版物のごあんない」を参照)
(財)日本生態系協会のあらまし


世界の常識、「持続可能な国づくり」

■池谷: やっぱりその辺は政治家が旗を振らないと、なかなか動かないんだろうなという感じで僕は見ていたんですけどね。政治家が大きな日本のビジョンというものを立てないと、何も動かないのではないかと思います。毎年僕らは、世界中を飛び回っています。それで各所で言われるのが、「日本のビジョンが見えない」「日本はこれから、どこに行こうとしているのか見えない」ということです。「日本はこういう格好になるんだよ」「ここを目指しているんだ」ということが、図にもないし、なんにもないわけですね。

 だから、僕らが韓国に行ってよくわかるのは、靖国神社参拝を含め、さまざまな国際問題がありますが、なによりの問題は、日本が自分の国のビジョンを示せていないということなのです。日本の形が見えないんです。 だから韓国・中国は不安に思っているわけですよ。それが元になって、別 の形で表面化しているということではないでしょうか。日本の形・ビジョンをしっかり示すことができれば、現在の国際問題と言われているいくつかは取るに足らないものになるのではないかと思います。日本のビジョン。これがキーポイントです。

▲財団では毎年、海外で情報収集を行っている。

(写真:(財)日本生態系 協会)
そこで、日本の形、ビジョンはどうあるべきかを考える場合、国際的に今どういう「国づくり」がいわれているのかと言いますと、たった一つなんです。それは何かというと、持続可能な国づくりだというのが、もうヨーロッパやアメリカでは常識なんですね。

 持続可能な国づくりには、順番が三つあります。まず一番として「自然生態系をどう守りますか」ということです。我々にとって、自然生態系は生存基盤なんですね。太陽光線、大気と、水と土と、多くの野生生物という、自然生態系。これがないと我々は生きていけません。自然生態系を守る、これがまず根本的に必要な「一」番目です。これを守らなければ、どんな企業もどんな経済もありえないというのは世界の常識なんですね。だから、まず一番として「自然生態系をどう守りますか」ということです。

 そして二番目が、持続可能な経済をどう作っていくのかということです。新たな経済、つまり、産業、第一次産業、第二次産業、第三次産業をどうしますか、どう変えていきますかということが二番目なんです 。三番目は社会をどうするのかということです。だから持続可能な国づくりというのは、まず自然生態系をどうするのか、二番目に経済を持続可能な経済にどう変えていくのか、三番目に社会、つまり人間の生き方ですね、個人個人の生き方、これをどう持続可能なものに変えるんですか、ということが問われているのです。もう少し発展させると、「社会」には、国づくり、都市計画とか農村計画とかが入りますが、これをどうするのかを考えていく必要があるのです。

 人間は、これらを基盤に住んでいますので、人間がどういうふうな生き方をしていくのかということも問われているのです。自然生態系、経済・産業、社会・人間生活というこの三段階が持続可能な社会の、国の形を考えていくうえで重要な段階なんですね。なかでも、一番重要なのが「自然生態系をどう守るんですか」、という考え方です。実はこれに答えようとしているのが、エコロジカル・ネットワークの考え方です。エコロジカル ・ネットワークというのは、自然をこれからも永久にずっと残していき、自然と共存した社会をつくることが基本なんだということに基づいている考え方なのです。エコロジカル・ネットワークは、最低限のベース・ラインとなる考え方なんです。


世界の常識が日本の常識にならない理由

■岩井: ちょっといいですか。私も全面 的に同意(agree)なんですが、一番目の「生態系が持続可能な最低限の条件」、これは世界の常識だと言われたんですが、どうしてそういう世界の常識が日本の常識になっていないんでしょうか。

■池谷: これは、やっぱり最大の問題は教育でしょう。

■岩井: しかし、どうして世界の常識が、日本人というのは、わりと自然を大事にするでしょう?感性はあるでしょう?

■池谷: 感性はあるんです。感性はずっとあった。

■岩井: だったら、今でもあるんではないでしょうか? 要するに経済最優先でずっと来ているというのは、確かにあるんです。しかし、そういう日本人の感性、自然に対する感性というのは、私はなくなっていないと思います。全然なくなっていないと、思っているんです。しかし、何が悪いんでしょうか。教育か、何が悪いんでしょう?世界の常識が日本の常識になっていないのは・・・。

■池谷: もちろん、根本的な部分の感性はなくなっていないと私も思います。ただ、その感性をより育て、生活や行動へと移していく、「人間づくり」の部分、ここが最大の問題になっているのではないかと考えています。人間づくりというのは、基本的に教育によって培われていくのではないでしょうか。

 そんななか、今、現在ですら、日本の文部科学省の中には環境教育という考え方はないんです。「こんなアホな」っていう話ですよ。環境教育は、感性をより成熟させるためにも大変重要な教育です。また、先程も、お話ししました通 り、私たちの生存基盤である自然生態系をどうまもるか、この点においても、環境教育は、最も優先しないといけない教育なのです。


経済最優先から、環境優先へ

■岩井: 私は政治家でしょう。政治家にそういう意識があれば、いいと思いますが、私みたいな感覚でいる人は少ないし、生態系がどうのこうの言ったって票になると考える政治家も少ないんです。

■池谷: いえいえ、これからは違いますよ。21世紀は、必ず、票になります。
それは、経験上、実感として感じます。協会を立ち上げた頃、議員の方々に、「自然を守らなくてはダメだ」、「自然生態系を知ってもらわなきゃダメだ」との思いから、「自然生態系をまもる応援団になってもらえないか」と話をしたことがあります。その時は、「いやぁ、そんな環境なんて 、ぜんぜん票になんないから」と言われました。それが20年前のことです。それがね、だんだん・・・ 。

■岩井: 変わってきたと?・・・・。

■池谷: もう今はぜんぜん違うんです。環境を知らなかったら票にならない。今は大変な環境優先になって、埼玉 県でも、「環境優先、生活重視」がキャッチフレーズになった程です。もう明らかに票になるんです。それに、国民のアンケートでも80パーセントの人たちが環境をちゃんと守らなくてはダメだと言っているんです。そういった意味では感性はちゃんと残ってはいるんです。それをきちんと活かし、育てるためにも、基本的には、まず教育をちゃんとしなきゃダメです。まず小さいときから自然教育といいましてね、自然生態系というものは、いかに重要かということを、きちんと教えるということが一番ですね。

 それと、もう一つあげたいのは、国の行政組織についてです。今の組織では、国の総論をどこの省庁が担っているのかが見えない。以前、国土庁と環境庁がありましたよね、本当はこれを国土環境省として、開発部局の上に立たないといかんですよ、法的に。ところが、今、国土計画局だとか、国土交通省の局の横並びのこんな小さいところになってしまっている。総論を作るところがこれでは、いいものはなかなかできないのではないかと思います。本来ならば、国土環境省になれば理想的だと思います。

■岩井: まあ、やっぱり、あれかなぁ。戦後、私らが小さい頃はとにかく食べるものもなかったですから、町は空襲で焼かれて、長崎・広島は原爆ですが、東京では大空襲があり、要するに瓦礫の中からみな立ち上がったわけです。私は京都の町育ちですから、本当に食べ物がありませんでした。私の弟なんかは栄養失調でしたから・・・。栄養失調になると、もう足は細くなるでしょう、それでおなかだけが出て来るんです。そういう時代のそういう状況から高度成長に入っていったわけで、ですから経済最優先というのはしょうがないというのか。それでずっときまして、それ以前からもしれませんが、やはりアメリカやヨーロッパや先進諸国に比べて、道路にしても水資源の関係にしても下水道にしても、何から何まで遅れていましたから。経済最優先から、もうどこかでギアチェンジしないといけなかったのかもしれないんですが、それがそのままきているのかもしれません。そう、組織なんかも。
■池谷: まったくその通りでして・・・。

■岩井: 行政組織もそのままずっと来ているのかもしれませんね。


ドイツが選んだ道、日本が選んだ道

■池谷: うーん、実は日本と同じような境遇として、ドイツがそうでした。第二次世界大戦で大変荒廃いたしましたよね、それで経済優先であがったわけです。経済優先のときに見習ったのは、 ドイツもアメリカを見習ったんです。日本もそうだけれども。ところが、ドイツはある時から アメリカと離れたんですね。この国の行方は違うと。だから経済がある程度あがったときに、このままじゃダメだ、違うとドイツは気づいたんです。

日本はそうでなくて、相変わらずアメリカを見ているんですね。ドイツはアメリカと一線を画したわけですよ。それは、ちょうど20年から30年前になると思います。日本も当然そこで、日本の独自の国づくりをしなければいけなかった。ところが、今もってアメリカの国づくりを見て、あれだけ膨大な、日本の25倍もある国土を見習ったって少し無理が生じるんですよ。そのことを反省しないで、そのまま経済優先できちゃった。そこに問題があるし、そのことに日本の官僚たちがそのまま乗っかっちゃったということがあって、それで今の経済優先の、つまりお金中心の社会を作ったわけです。当然、人の心は千々に乱れるわけで問題を起こす。多くの綺麗な心じゃなくて、穢い心になっていっちゃったんですね。犯罪も増えると。

 そう考えても、やはり行き着くのは一つです。やはり日本は日本の国を、ちゃんとつくらないといけないのです。日本列島に降る雨の量 は決まっているわけですから、自然環境というのは、その中で、どう持続的に行くかということを 、ちゃんと考えないとダメですね。政府の組織体制も、それにあわせないと。ですので、国土環境省をまず上に持っていって、その下に、国土交通省とか農林水産省・・・、という提案へと結びつくのです。繰り返しますが、自然生態系というのは、我々の基本ですから、これを絶対に壊してはいけない。これが一番で、そのうえでの、経済をどうするかということになりますから、お金は二番目なんですね。社会は、さらにこれら2つを土台にしてどう作るのかということになってくるわけです。残念なのは、今の日本の各省庁の系列がこういうかたちには沿っていない。今の話題で言いますと、NHKをどうしようなんて話が出ていますけれど、本当は違うんです。もっと大きな構造改革をしないといけないのではないでしょうか。それをしない限り、日本のいいかたちというのは、国土形成法をせっかくつくっても、実際には動かないのではないでしょうか。

 それから、人間づくりのベースとなる環境教育ができていない。やはり、これは大きな問題だと考えています。それから政府のかたちもできていない、これではいくらやったって、なかなか実を結ばない。こういった改革は、もう政治家の方々が動いてくれないと絶対にできませんね。今の官僚制度では、縦割りの中で、自分たちだけの事柄に終始してしまうことになりかねない。


市民と行政の協働につきまとうジレンマ

■岩井: 池谷さんの言われることはわからないではありません。しかしエコロジカル・ネットワークその他の、サスティナブルな国土づくりができないと言い切ってしまうと、そこでもう思考停止になってしまいますから、そういう根本的な問題がありますよということで、それはそれで努力するとしまして、現実の中でできそうなことを考えてみましょうか。

 国土交通省で、国土づくりに一番力があるのは河川局であり、道路局です。あと都市局や住宅局も勿論あるんですが、河川局、道路局だとして、そのあたりがどういう意識を持っているのか。そして、どういう政策を国土交通 行政というのか、まあ、国土交通省だけの話になるのか、あるいは場合によっては農林水産省や、勿論、環境省とも連携しながらかもしれませんが、何をやらなければならないか、何ができるのかというところをちょっと行っていく必要があるんではないかと思います。今日はせっかく堂本さん、川池さんに来ていただいていますので、まず、川池さんからお願いしましょうか。国土交通省あたりと、今までどのような接触をしてこられて、現在どんな状況になっていて、これはいいとか、悪いとか、ぜんぜん話にならないとか、話になるとか、あると思うんですが、ざっくばらんに話していただけませんか。

■川池: これまでの係わりでいいますと、例えば、荒川の埼玉 県上流域をモデル地域として、三箇年くらいかけて、どういったエコロジカル・ネットワークができるのかを図面 を含めて、示していく作業に関わりました。その成果は最終形として、「人と自然との美しい共生、エコロジカル・ネットワーク」という形で、河川局からパンフレットとしてまとめさせて頂いています。

こういった係わりのなかで感じますのは、行政的な垣根が、場合によっては、少なからず障害になっているのではないかということです。たとえば、河川で言いますと、河川区域の外のことについては、なかなか強く言えないといったケースです。こうした図面 を描くことさえ、「管轄外だから難しいのでは」と言われる方もいます。さらに具体的に申し上げますと、絵(図面 )は描くけれど、では、次にそれを元に具体的に進めていく時に、なかなか先に進めないという大きなジレンマが、お互いにあるなということを感じました。

■岩井: なるほど。河川局に限らず、区域にとらわれた考え方をする人も多いと思いますが、そういう考え方はもう古いんです。河川事業としてやるべきは、当然川かもしれませんが市町村との連携、県との連携、他の省庁との連携というのがありますから、川の中がメインでこれが軸になるのであれば、「川はこうしますよ」、「全体としては、こうでなければならないから、こういうふうにやりませんか」というように、働きかけていけばいい話ですから。つまり自分のところで全部はできっこないわけですから、それは。

 私が京浜工事事務所長のときにした総合治水対策ですが、川の中だけではできないわけです。流域外にも出て行かないとできません。それで、治水対策というのは総合的にやらないといけません、ということになってきまして、そのあたりから考え方が変わってきました。そのかわり、一緒にやりますよということで。

堂本泰章さん
▲堂本泰章(どうもと やすあき)氏
(財)埼玉県生態系保護協会 事務局長/(財)日本生態系協会理事/日本ビオトープ管理士会専務理事/NPO法人あらかわ学会理事 ほか


■堂本: 今の話に関連するのですが、ちょうど、これを始めた当初くらいに平成13年、14年と、国土交通省の依頼で「緑の回廊」の研究会に私も参加させていただきました。それは道路局と河川局と公園局との連携事業で、見方を変えれば、エコロジカル・ネットワークの動線をちゃんとしようという研究会でした。その内容をパンフレットにもしたのです。しかし、そこで終わってしまいました。そこから次の段階の、事業化のときに、どこが主体をもって回転させていくかという段階になると、現実にはやはり動き出さない。各局の方は発想は持っておられるんだけれども、それをちゃんと繋げて、動き出すまでの仕掛けはできていない現状です。道路と河川が同じ地域で工事をやるとすれば、連携してできることはいっぱいありますよね。しかも、緑のエコロジカル ・ネットワークの結節点の軸になるとか、この事業を一緒にやることでつながりの部分が可能になるとか、そのようなことをいくつか整理して報告書にもなっているはずなのにです。

■岩井: 要するに、確かに現在なお、そういう縄張りとでもいうか、それに囚われている人が多いといえば多いのかもしれませんが、それにとらわれず新しい考え方で行けば、新しい考え方の人も増えていますからね、どんどん提案して行くことです。ほっといてできるというものではありませんから、働きかけていかないとダメなんですが、なんといいますか、実は、それほど抵抗があるということではないように私は思います。新しい考え方は出てきているんですから。

■池谷: そういう考え方の方がおられるから、私どもにも声がかかるんですよね。

■岩井: それを大事にして、そういう動きを増やしていくということでしょうかな?私は希望があると思います、これからは。希望があるから、やらなくてはいけないということになるわけですが。

■川池: 少し感覚的なことを申し上げてしまいますが、たとえば、国で大枠のものを作っても、実際に実行していくのには、市町村レベルのまちづくりなどといったレベルで実現させていかなければならないと思うのです。が、そこにちょっと隔たりがあるのかなと感じる時があります。国としても、市町村のまちづくりまでは、ちょっと立ち入れない、あるいは市町村のほうでも、国がやってくれるのなら乗るよといったような、お互い少し受動的というか、壁になっているのかなと思うところがあるのですが、いかがでしょう。

■岩井: それは、市町村はお金がないもんですから、だいたいがそんな考え方になりがちなんです、普通 は。ですが、そこは乗り越えないといけないわけです。私たちが多摩川の河川環境管理計画というのをつくりましたのは、私が京浜工事事務所にいるときですから、昭和52年とか3年とかなんですが、多摩川の河川環境計画では、「水と緑のネットワーク」といって、市町村をも含めて構想して、やりましたから。ただ、それのフォローアップができていない部分もはあるかもしれないんですが。

ですから、どうやって市町村をまきこんでいくのかというのが大事なんですが、地域のNPOだとか、地域の住民とかの思いというか、動きもあるんでしょう。そういうのは市町村とやっていきませんと。国土交通省がぱっと言ったら、ぱっとやるというものではないですから。ですが広い立場で広域的なネットワークみたいなことで調査、計画をし、言うべきことは言う、働きかける。地域のNPO含め、地域の人々にも働きかけるということでやっていけば。ですから、本当に、そういう生態系というか、環境が地域にとって、要するにサスティナブルな地域づくりに必要だということであれば、それはできていくんじゃないですか、恐らく。ですから、それが本当に必要かどうかなんです。みんながどう思っているか。例えば、池谷さん一人がそう思っているのでは・・・・。

■堂本: 僕もこういう仕事をしている関係で、沿川とか周辺の各市町村のマスタープランだとか緑の基本計画とか、全部調べているんですよ。そうすると、緑の基本計画あたりなんていうのは、考え方をちゃんと整理すれば、まさしく、エコロジカル・ネットワークに展開する方向性というのをどこも持ってはいるのです。それを結局、じゃあ、何から踏み出そうかという、後押しする何かがないんですね。


川は、環境・自然を繋ぐ軸

■岩井: そこがちょっと、これから知恵を出さなくてはいけませんね。やっぱりお金がかかりますから、どういうお金を用意していくかということなんでしょうね。

■堂本: その市町村の形ですが、10年先のかたち、ビジョン、どういう町にするんだという、その図をつくらなければダメなんです。その図が日本には一枚もないんですよ。全国の市町村を後押しするような、それを支援するような特定財源などを持ってこないと・・・・。

■岩井: そういうことに対して地域の人たち、地域住民というか、NPO中心に。全ての住民の問題意識が高いわけではないので、NPOの人たち、問題意識の高いリーダー的な人たちが中心になって住民にPRしながら、力をあげるというか、声をあげるというか、ムードを高めようというのか、やっぱりそういうようなものが必要なんです。

■堂本: 市町村長とかでも、こういった考え方でやりたいという人がいるんですよ。

■岩井: そして、それをやらないと、もう市長には当選しませんよ(笑)というような雰囲気とか、市会議員になるんでしたら、やっぱり環境や地域のそういうことを少しでも言わないと、ちゃんと当選しませんよというようなことにならないといけないかもしれませんね。

■池谷: そういったモデル事業を具体的に私たちはやりたいなと思っているんです。

■岩井: それで、やっぱり市町村にしても、国土交通省の現場や事務所にしても、わからないところがありますから、それは皆さんのほうが専門だし、そういう立場からどんどん指導といいますか、そのために必要な調査ができればいいんですが・・・。

■堂本: かなり、河川サイドの方はだいぶ変わってきたというか、河川が環境、自然を繋ぐ軸だという発想を持っている方は増えてきましたが、道路サイドの方は、まだそこまでは踏み込んで言えないみたいですね。でも、道路というのは、現状としては自然を分断しているけれど、「道路は自然を繋ぐものでもある」という発想の転換をすれば、河川と道路事業の連携で本当に軸となるものが展開できるはずなんです。その辺がもう ちょっと具体化できるような仕掛けというのが必要なのかなと思いますけどね。どうしても道路というと自然を分断するということで、環境は、そのためのいろいろな対策云々ということでしかなかったんです。でも、そうではなくて、積極的に道路事業が自然を繋ぐという視点から、どういう形態がいいのかとか、どこに問題があるとかないのかとか、そういう光の当て方もこれから必要なのではないかと、僕らは思っているんですが。


まずはアピール

■岩井: 私にとってのエコロジカル・ネットワークというのは、池谷さんとは違う感覚もあるかもしれませんが、私も環境のことは絶対やらなくてはいけないと思っていますし、あと問題は、何をどう展開していくのかということなんです。河川のほうは、今、堂本さんが言われたように、ある程度変わってきていますので理解が得られるようになってきていますし、いろんなことを言う人も出てきています。問題は道路です。しかし、道路も、そういうことへの理解のある人というのは、少しずつ出てきてはいるんです。まだ全般 的に見ましたら、大したことはないかもしれませんが・・・。

 ですからみんなで、大学の先生もNPOも、自然との共生と言っている人たちも、いろんな人たちが言わなければいけません。中村英夫さんだとか大学の先生というのは、結構発言力があるんです。わりに社会的に信用されているんです。ですから、そういう人たちにエコロジカル・ネットワークのことを。それと、諸外国の例などの紹介含め、オピニオン・リーダーじゃないですが、そういう人たちにPRしないといけませんね。

■池谷: そういった自然生態系の重要性をアピールする場を作らなきゃいけないとして、国の審議会がありますよね。今後の国のあり方を考える際に、自然生態系からみた経済をどうするの、社会はどうするの、という考え方が当然必要なわけです。ところが、経済は経済の人だけで集めるんですね。だから浮き上がって行っちゃうんです。結局、持続可能な経済とは違った格好になってくるんです。この辺の委員会のつくりかたも、問題が多いんですよ。本当に多い。

たとえば、国土審議会においても、私たちも委員として、エコロジカル・ネットワークの重要性を主張させて頂いたのです。

■岩井: 私は随分前に、黒川紀章さんが言ったのを聞いているんです。

■池谷: 黒川さんにはうちの顧問をやっていただいています。

■岩井: やっぱり、黒川紀章たちのような相当のインパクト、発言力、力を持っている人たちに声をあげてもらうようにしていったらいいですね。当然中村英夫さんとか、景観関係では東工大の中村さんとかいらっしゃるでしょう。いろいろおられるので、やっぱり学校の先生だとか、あとは評論家とかですが。

■池谷: その辺の対策は、確かに我々としても考えないといけませんね。

■岩井: 池谷さん、ちょっと力を入れてやらなければいけませんよ。私もやりますよ。

■池谷: 是非ね、これは重要なことなんです。これをちゃんとしないと、日本は国際的にもどんどん取り残されていってしまいます 。

■岩井: やっぱり、尊敬されなくなってしまいます。日本自身が。文化面 では日本独特の文化がいっぱいあるんだし、本当は、生態系やエコロジカルな面 においても日本は自然に対する豊かな感性を持っているんです。これはやはり無くなっていないと私は思っているんですが、なにかどこかが狂っているんですね。

■池谷: えらい狂っているんですよ。お金中心の社会になっちゃったっていうのは、これは問題ですよ。

国土審議会国土審議会調査改革部会報告  「国土の総合的点検」−新しい"国のかたち"へ向けて−
「黒川紀章氏インタビュー」(KONIKA MINORUTA WEBサイト)
「メンバー紹介/中村良夫」(美しい景観を創る会WEBサイト)


荒川ビオトープを例として

■岩井: 話はちょっと変わりますが、先ほど荒川の話が出ていましたが、堂本さん、荒川のどのあたりだったか、トンボの何かをやっているとか聞きましたが。

■堂本: 荒川ビオトープですね。

■岩井: それは、うまくできて、みんなに喜ばれているんですか?

■堂本: ええ。ここに、私どもが協力して作成されました国土交通省荒川上流河川事務所が出しているパンフレットがありますが、荒川ではエコロジカルネットワークを基本に考えています。荒川は上流が埼玉 県、下流は東京都を流れ、東京湾に最後は流れ込みます。その荒川の中流域にあたる河川敷で、ちょうど北本市の地域ですが、「荒川ビオトープ」があります。さらに下流に下っていきますと、桶川市のちょうど本田エアポートがある近くで、今、自然再生事業が進められています。

 事業として、「荒川ビオトープ」が、最初に行われた荒川の環境系の事業になります。実はここの隣接地に、埼玉 県が自然学習公園というものを作っています。これは、うちの会((財)埼玉 県生態系保護協会)が三十年以上前から働きかけ、国土交通省のアーバン・エコロジカル・パークという、自然生態系を重視した都市公園として位 置づけられています。この公園は、30haくらいの規模の公園ですが、本来この地域に昔から生息していたサシバとかキツネなどにとっては、この面 積では狭くて、うまく繁殖できないのです。公園の環境はすごくいいのですが、生態系の価値の観点では、面 積が足りないんです。この公園がたまたま荒川に隣接していたのですが、河川敷を確認したところ、そこが麦畑と牧草地になっていました。そこで、荒川上流河川事務所さんに、なんとかここの占有許可の解除ができないか、再びこの地域でサシバやキツネが繁殖できるようにできないかということで、提案、相談しましたところ、「いいですよ」という話になり、その実現に向けて一緒に考え、荒川ビオトープが完成した経緯があります。

荒川ビオトープ
▲荒川ビオトープ (写真提供:国土交通省荒川上流河川事務所)

 構想としては、学習公園を自然と触れ合って楽しむ「自然観察エリア」、荒川ビオトープを原則立ち入り禁止の「ビオトープエリア」との考え方で、整備したという経緯があります。ただ、ビオトープについては、ビデオカメラが設置されていますので、ビオトープの様子が自然学習公園内にあります学習センターで映像を確認することができます。つまり、生き物たちが安心して休んだり繁殖できる場を川の中で確保することで、この地域全体の生態系の質を高めるということを試みた訳です。おかげさまで、今、キツネも繁殖するようになりました。サシバはまだ繁殖にはいたりませんが、時々飛んでくるようになりました。

荒川ビオトープ(国土交通省荒川上流河川事務所)
荒川中流部の河川環境整備「荒川エコロジカル(ビオトープ)ネットワークの構築」(荒川上流河川事務所)
荒川エコロジカルネットワークについて(荒川上流河川事務所)
埼玉 県自然学習センター
荒川上流河川事務所発行のパンフレット一覧


エコロジカル・ネットワークで全国各地をつなごう!

■岩井: こういうふうに、できるところから少しでもやっていかないといけないと思います。現実にやっていかなくてはならない事は、どんどんとやっていくと同時に、エコロジカル・ネットワークやビオトープなどについての情報です、何がどうなっているのか、今、何をやらなくてはならないのか、をアピールする必要があります。それには資料がちょっと足りないかもしれません。ですからビデオを作るとか、国土交通省の事務所に作らせてもいいんですが、例えば、「道路だって生態系の回廊が必要です」とか、「小学校でもビオトープは必要です」とか、いろんな方向からアピールしたほうがいいんではないでしょうか。

■池谷: 具体的におもしろい取り組みができるのではないかと思う町もいくつかあるんですよ。たとえば、荒川などの川を軸として、まずはいくつかの町をモデル地域にして、将来的には地域全体の自然と共存したエコロジカル・ネットワークを実現させていくことなども考えています。

■岩井: そういうモデル事業みたいなものを実際に、まずは地元の市町村、それから県も一緒にやっていく。NPOも入ってですね。

■岩井: 可能性はあるのですから、そういうのをいくつかやっていったらいいですね。

■池谷: ええ、そうですね。非常におもしろいと思います。

■岩井: そう考えますと、全国には、川はいっぱいあるわけですから、何も関東だけでやらなくてもいいわけですね。

■堂本: 荒川上流河川事務所さんが、荒川のビオトープネットワーク構想を示した資料を作ってくださるので、沿線の自治体にこうした話を持っていくのはすごくやりやすいんです。川が軸になって拠点になっているんですから、それを町がどう活かすかというのは、みなさんも知恵も力も出しあいやすくなります。

■岩井: やっぱり中核になるものがないと、やりにくいところがありますが。

■堂本: そうですね。荒川でいえば荒川ビオトープがあり、これがまた自然再生事業とのつながりがあるということで、事務所さんが展開を考えて実践されています。荒川ビオトープがすごく大きなきっかけになって、いい流れができているのかなと思いますね。

■池谷: 荒川は韓国からの視察が非常に多くて、あの清渓川(チョンゲチョン)ができる前から、荒川ビオトープを含めいくつかの拠点を、我々だけでなく荒川上流河川事務所も随分案内しています。これはつまり、行政の対応も含め、日本の河川の自然に対する見方や理解、関わり方は、アジアの中でも、引っ張る力があるということだと思います。

■岩井: 最先端ではないかもしれませんが、先頭を行かないといけませんね。

■池谷: せっかく先頭を行く能力があるのにね。このままでは、日本は置いていかれるのではないかと危惧しています。我々も、もっと頑張らないといけないと感じています。

■堂本: この年末も、韓国のテレビ局がドイツに行ってから、うちに取材に来られました。一時間番組を作るとか言っていましたけれどもね。これも、清渓川(チョンゲチョン)というのがひとつのきっかけになって、韓国では、より良い川づくりということとかに関心が高まっているということだと思います。

■岩井: そういうことで、日本のテレビ局は来ないんですか?

■堂本: 来ないです(笑)。韓国の方が、むしろ国民の中に、エコロジカル・ネットワークという概念は浸透しているということなのでしょうね。

■岩井: まだちょっと日本の問題意識が低いですね。ですから、もうちょっといろんなことをやりながら、関東に限らず、九州だ、北海道だとか、ずっとあるわけですから、いろんなところでやりながら、やっぱりPRを進めていかないといけませんね。

■池谷: 国の予算も、そういうことにも持ってこないと・・・。

■岩井: 事務所だとか市町村や県だとか、それから道路の管理者である道路局などを実際に巻き込まないと。私もいろんなところに働きかけていきたいと思いますので、生態系協会のほうもそういったPRに力を注いでいただきたいと思います。ところで、協会の支部というのは、地域でいうと、今、どうなっているんでしょうか。

■池谷: 協会の制度で、ビオトープ管理士制度というのを立ち上げたのですが、 そういう管理士の方たちの手で各ブロックごとに、ベースとしての支部ができようとしています。そこから、また拡がりが動いていますけれどね。

■岩井: そういう人たちが核になって、それぞれの事務所、つまり国土交通省の現場とコンタクトを取って、それを協会が本部として応援するとか。あるいはまた僕なんかも 、また国土交通省側に働きかけていくとか。事例を増やしながら、いろんなオピニオン ・リーダー、大学の先生とか黒川紀章さんみたいな方も含めてね。ちょっとこれね、意識的にPRしてみましょうかね。これはアピール、PRじゃなくてアピールですね。

■池谷: 当協会でも広報用のプロダクションを立ち上げたんですよ。積極的にテレビ局やラジオ局に情報を流して、どんどん行こうと。待っていたのではダメだとの思いからです。

■岩井: それは、とっても大事なことですね。協会が海外の事例をまとめられたというのが、この本ですか。

■川池: 「ビオトープネットワーク」1、2とありまして、1が主に都市環境の関係で、2が農村でのビオトープネットワークのあり方をとりあげています。

■岩井: これだけのポテンシャルがあるのだから、どんどんアピールしないといけませんね。今日はどうもありがとうございました。またいずれ時機を見て、第二回をやりたいと思います。

日本ビオトープ管理士会
「ビオトープネットワーク」 −都市・農村・自然の新秩序−
「ビオトープネットワークII」 −環境の世紀を担う農業への挑戦−

 

 

   
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