川のキーパーソン

 

TALK&INTERVIEW

 第5回 座談会
 「
川を軸として、環境時代の先端を行く」

川はエコロジカル・ネットワークの重要な軸を形成する。木曾三川で蓄積された経験を十分活かしてつくられたのが河川環境楽園であり、その多様な施設である。環境の時代をリードする取り組みを是非やってもらいたいものだ。― 岩井國臣 ―

プロフィール プロフィール プロフィール プロフィール

座談会出席者
(H18.1.13 水辺共生体験館にて / 写真左より

【河村 三郎(こうむら さぶろう)】 
1931年岐阜県生まれ。岐阜大学工学部(土木工学科)卒。1964年〜1966年コロラド州立大学大学院に留学。工学博士、岐阜大学名誉教授。専攻は土砂水理学、河川工学。水辺共生体験館館長。NPO法人魚道研究会特別 顧問、岐阜県自然共生工法研究会会長、(株)ユニオン・河川環境研究所所長。
NPO法人魚道研究会
岐阜県自然共生工法研究会

【中村 敏一(なかむら としかず)】
国土交通省岩手河川国道事務所長、国土技術政策総合研究所環境研究部環境研究官を経て、平成17年より国土交通 省中部地方整備局木曽川上流河川事務所事務所長。
国土交通 省中部地方整備局木曽川上流河川事務所事務所

【中村 稔(なかむら みのる)】
昭和47年〜昭和50年河川部建設専門官。昭和53年〜62年、旧建設省中部地方建設局河川情報管理官として実施計画認可に関する各県との文書交換や調整に携わる。昭和63年〜平成6年、水公団長良川河口堰建設所長。現・(株)ニュージェック中部支店顧問。岩井の建設省時代の同僚。
川のキーパーソン・第4回座談回 「河川行政の立場から長良川河口堰建設当時を語る」

【岩井 國臣(いわい くにおみ)】 
参議院議員
川のおじさん川を語るその2「中部の川におもう」



木曽川ほとりの環境共生型テーマパークにて

■岩井: 私はやはり、これからは環境の時代ではないかと思います。河川法も改正され、「環境」が一つの大きな目標に加えられ、「治水」・「利水」そして「環境」と三本柱でやっていこうということで、これまで随分河川行政も変わってきました。しかし、まだまだこれからだという感じを持っています。また、ここ中部地方整備局、それも特に木曽三川は長良川の河口堰で・・・、当時、先生方のおかげであったわけですが、建設省の一つの取り組みとして、もの凄いエネルギーを使って生態系の調査をやったことは、もの凄いエポック・メイキングな出来事であったのではないかと思っています。

 そのような流れの中で、川の自然やそこに育まれてきた風土・文化まで学べる「河川環境楽園」が誕生したと思っています。敷地が50ヘクタールもあるそうですが、そこに国営木曾三川公園も岐阜県営公園もあれば、東海北陸自動車道まで通 っているわけで、わが国初の環境共生型テーマパークと言われてますね。その中にある建設省関係の「水辺共生体験館」は、河村先生に館長をお願いしているわけですが、さらにその隣にある「岐阜県河川環境研究所」、以前は「水産試験場」と言っていたところですが、それが拡大された研究機関ということですし、独立行政法人土木研究所の「自然共生研究センター」、それと公園が一体となって、こちらのいろんな施設は、淡水魚の一つのメッカになっていると思います。

 私の認識としては、長良川河口堰のあの時のいろんな調査が、基になっているというのか、一つの縁としてつながっているのではないかと思います。全国でそういった過去の実績を持っているところはありません。また現在、この施設のような立派な施設、それからいろんな調査や取り組みというのは、他にはありません。世界にどのようなものがあるのか知りませんが、本当に凄いことではないでしょうか。

 河川の環境関係というのは、昔に比べたら随分変わってはきていますが、まだまだこれからだというところがあります。木曽三川の取り組みは、これは旧建設省、今は国土交通 省ですが、旧建設省と岐阜県と、それから大学の先生方と一体となってやっていただいています。そういった取り組みへの期待は非常に大きなものがあり、ぜひ最先端をいっていただいて、全国をリードしていってもらいたいという感じを持っております。なかなか今まで、こちらのほうにお邪魔する機会がなく、やっと今日、中村所長さんのお招きで寄せさせていただいたわけです。早速ですが、はじめに「水辺共生体験館」について簡単にご紹介いただけますか?

航空写真
▲河川環境楽園航空写 真
■中村(敏): ここ水辺共生体験館は、木曽川上流河川事務所が整備し、平成17年に開館したものです。近年では、地域の皆さんと行政が情報を共有しながら河川環境を保全したり復元していく必要性が高まっていますし、一方では川が環境教育の場として非常に優れているということで、小中学校での学習の場としても保全・整備などが積極的に進められています。そういったニーズにこたえて、川に対する正しい知識を蓄積し、発信していこうとこの施設をつくったわけです。河川環境楽園の中には、先ほど先生がおっしゃった、河川・湖沼の基礎的研究や応用的研究を行っている「自然共生研究センター」、ここは世界でも最大規模の実験河川を備えているんですが、その他にも、「河川環境研究所」のような研究機関から、市民が楽しく河川で遊び学べる施設まであるんです。

【河川環境楽園(岐阜県各務原市川島笠田町)内の施設】
水辺共生体験館
岐阜県河川環境研究所
独立行政法人 土木研究所「自然共生研究センター」
自然発見館 (国土交通省中部地方整備局)
国営 木曽三川公園
オアシスパーク
世界淡水魚園水族館アクア・トトぎふ
国土交通 省木曽川上流河川事務所



環境の時代をリードするもの

■岩井: 河村先生には、こういった施設をいろいろとバックアップしていただいているわけですけが、どのように、世界の中でと言ったら大きいですが、ここだけの話ではなく、日本全体でもいいですが、先生の感覚でどのようにご覧になっているのかをお話ししていただきたいと思います。

■河村: この地区が、そういった意味でのセンター的な施設になってきたなというようには思っています。又、地元のほうでも岐阜県が主体となって、「自然工法研究会」というのをつくってまして、あそこにも展示してあるような工法を通 じて研修会をやって、自然共生の取り組みを効果的に進めようとしています。それから「自然工法管理士認定制度」というのをつくり、これ、役所の人も含めてなんですが、一般 市民にも受講してもらって、例えば河川環境がらみで言えばですね。河川改修をする時に、環境に対応したどんな工法をとれるか学んでもらうとか。また、この資格を取った人たちがつくった、そうした工法を実行できる組織もあるんです。

 それともう一つ、ここにも関係あるんですが、岐阜県の中に、これは前の梶原知事が平成7年秋に、「世界魚道会議'95」というのを開いたきっかけで、NPO法人として認めてもらった「魚道研究会」というのがあります。そこでは年一回「事例発表会」というのがありまして、全国から「魚道」を設計するような人や、研究者などに来ていただいて一日やっています。でも、会場はここではありません。ここは、ちょっと一般 の交通というか、まともな公共の交通機関がありませんので、岐阜市内でやっていますが、関係メンバーも育ってきています。「魚道」の関係では、昨年10月開催の「全国魚道実践会議2005 in 岐阜」の時には、北海道からかなり大勢の人たちが視察に来られました。「魚道」を如何にしたらいいかといっても、向こう(北海道)は大型の魚、サケ・マスとかが主体ですので、ちょっと形態が違うので、ここと連携してやっていくというようなバックアップとしてですが・・・。

岐阜県自然共生工法研究会
岐阜県自然工法管理士制度(岐阜県自然共生工法研究会WEBサイト内)
NPO法人魚道研究会


水辺共生体験館の役割

■岩井: 施設の活用という面 ではどんなふうにお考えですか?

川のいきものクラフト教室
▲川のいきものクラフト教室(体験館セミナールームにて)
写真提供:水辺共生体験館
■河村: 活用でいえば、セミナー室でちょっと検討会を開いたりはしています。しかし、当館は「体験館」という名前になっていますので、いかに「体験」という言葉にあうように施設を改善していくかということです。来年からは中村所長の方にもお願いして「体験」を全面 に出していきたいと考えているんです。要するに、立体水路模型やCG動画、天井スクリーンなどを駆使して映像では一流になっているんです。が、しかし実際、人間は映像を見ただけではダメで、人間は触ってみないとだめなんです。そういう面 で、「魚道」の模型とか、水路の小型のもので土砂が実際に流れるのを見られるようにするとか、河道をいじるとどう変わるかとか、そういうのを見せたいということなんです。そのような案も出てきていますので、議論しながらおいおい改善し、自然共生研究セーターの大きい水路でもそのような絡みで、体験して覚えていただくというのが一番いいのかなあと思っています。

 一時、教育現場では総合学習で熱が上がったんですが、最近ちょっと熱が下がっています。というのは、あれは何というのでしょうか、教科内容の見直しといいますか、とにかく時間が足りないんですね。一時は盛り上がって、続いているところはどんどん盛り上がっているんですが、そうでないところは下火になってしまいました。要するに学力が落ちているからというようなこともあり、総合学習で自然から学ぼうというのはちょっと減っているんです。それを維持しなければいけないと思っていますが、やはり全体的には落ちているんでしょうか。そういう点では、学校の先生方にも来ていただいて、勉強してもらわなければいけないなあということがあります。まず先生の関心が低い・・・というのが多いんです。ですから、「出前講座」というのも意味はあるんですが、それに学校のほうが頼ってしまうんですね。ここへ生徒と先生方に来ていただいても、結局は、隣の自然共生研究センターでもそうなんですが、見学に来ても案内役の人に頼りきって、先生は知らん顔をして見ているだけというのが現状なんです。

■岩井: まずは先生の教育ということですね。

■河村: そうそう、そういうことを考えなきゃいけません。研修会みたいなものですとか。それをどう、教育委員会等を通 じてやるかとか、そういった課題はありますけれども・・・。

教育の基礎に「体験」

■岩井: 学校の教育というのは、なかなか難しい問題があり、私自身も教育がどうこうというのは、言えないところもあります。それぞれに難しいと思いますが、感覚的に言えば、「体験学習」が重要ですね。知識の詰め込みだけではダメで、いろんなものを体験する、まあ、スポーツもありますけれど、中でも、生態系との出会いとか体験というのは、ものすごく大事なことではないかと思います。私なんかは小さい頃、よく川で泳いだもんです。

■河村: そうそう、プールなんてありませんでしたから。

■岩井: なかったから、川で泳いだり、魚取りなんかにも行きました。近所の川とかに。

■河村: それに、昔はガキ大将がたくさんいましたからね。(笑)

■岩井: そういうことが、自分の人格形成の上でというか、人生の中で、大変良かったというふうに思っているんです。今の子どもたちも、もっと自然との触れ合い、まさに「体験」をやって欲しいと私自身思いますし、河川行政の中にも、「水辺の学校」とか、やはり体験をもっと進めていこうという一つの考え方があります。それぞれの地域、それぞれの川でいろんなことをされていると思いますが、この木曽三川あたりが、全国の中でも中心になって、そういう新しい取り組みを模範演技じゃないですが、やっていかれると良いと思います。中村所長は、そういう河川行政の中で、環境関係についてもいろんなことをお考えになっているのではないでしょうか?体験館との関連なども当然、念頭におきながら、今、どのようなことをお考えになっているのか。このような施設をどのように見ておられるのか、お話しいただけたらと思います。

水遊び

▲環境楽園で水あそび
写真提供:木曽川上流河川事務所

■中村(敏): 河川に関連する資料館としては、荒川の知水資料館とか、岩手の北上川学習交流館「あいぽーと」だとか、これよりももっと大きな施設をつくっているところもあると思いますが、ここの特徴は治水・利水面 は少し横において、環境だけを見ているところはあるんです。河川事務所の活動の中で、これをどう活かしていくかということでは、治水面 も利水面も広報したいことがある中で、環境を主目的にしているので難しいといえば難しいんです。しかし、今日見て頂いたとおり、土木研究所や水産部局とか、公園部局とか。ここの施設周辺は凄いストックというか、集積のあるところなので、そこに河川事務所も一枚加わって、いかに「体験館」が本来期待される役割を果 たせるようにしていくか考えています。この施設に来ていただく方は治水も利水も関心があるかと思いますので、主目的を大切にしながら、いろんな情報発信や情報提供ができるようにしていきたいと考えています。

荒川知水資料館amoa
北上川学習交流館「あいぽーと」


よき指導者と協力者を育てる

■岩井: 河村先生のお話にも出ていましたし、先ほどの県の「河川環境センター」の担当の方もおっしゃっていましたけれど、NPOを巻き込んでみたい、というような話をされてましたでしょう?河川行政の中でも水辺の楽校はどうかとか、そういう考え方が出ていますね。事実あると思いますが、そのあたりについては何かありませんか?

■中村(敏): 川の整備等を考えるに当たっても、今は、地元の人といろんな意見交換をしたり、NPOとのつながりができたりしていますでしょう?この「体験館」自体も非常にたくさんの方がおいでになるので、体験館にある「木曽三川交流スクエア」では、様々な情報を発信する場を提供したり、意見交換会をしながらいろんな人や団体が集まれるようにしています。そこのサポートということで、来年度からはボランティア公募していこうということにはなっているんです。

■岩井: 先ほど、体験館の中をご案内いただいた時にもちょっと申し上げたんですが、一般 の人が来られますね、家族連れでですとかね。それはそれで大事なことで、それはそれで力を入れてやっていかないといけません。ですが、このような場所というのは、そうは無いわけですから、もの凄い財産というか、施設だと思うんです。今、河村先生のお話の中にも出ていましたように、学校の先生を集めてとか、学校の課外教育の一環としてとか、そのようなことにももっと活用したいですね。ここへ来てもらい、そのようなことをどんどんやるとか、いろんな河川に関わるNPOも増えてきていますから、NPOのリーダーの皆さんをここに集めて研修だとか、そのようなことをしたらどうかと思っているんですが。

■中村(敏): 学校の先生方を集めて河村先生にも講師をしていただくとかですね。ここの場所を提供して、学校の先生方に先導的な役割を果 たしていただくとか、そのような方々を集めて、外部講師もお願いして体験コース的なものをやることもできますね。

■岩井: 私は京浜工事事務所長の時に、鶴見川の「総合治水」というのを始めました。僕が始めたわけではなくて、前任の近藤さんの時くらいから始まっているわけですが、僕の時もそれが一つ大きな柱で、その時に僕が思いましたのは、住民の皆さんの理解というか、認識がないと、「総合的に」などというのはできないと思うんですが。

■河村: そうですね。

鶴見川・地域の中の鶴見川(国土交通 省河川局WEBサイト内)
鶴見川水系河川整備基本方針(PDF・国土交通 省河川局WEBサイト内)


■岩井: その時に、僕が思ったのは、やっぱり学校の先生なんです。それで、学校の先生向けの副読本みたいなものをつくり、前河川局長の渡辺君が調査課長をしていましたが、学校の先生向けにいろいろなことをやりました。そうすると、先生方がもの凄く興味を持つでしょう、鶴見川に。すると、いろいろ引き合いがあるというか・・・。ですから、学校の先生方に対する働きかけがやはり必要なんです。先生、そのあたりはどのようにお考えでしょうか?

■河村: まあ、体験館も去年できたばかりで、積極的にはやれませんでしたが、やはり教育委員会を通 してやらないと、校長先生がなかなか先生方を出してくれないんです。

■岩井: 教育委員会との連携がいりますね。

■河村: それが、まず最初にないといけないのかと思います。県の方の関係で、そういう講習会等もちょっとはしたことはあるんです。もっとも岐阜市内の方でででしたが。しかも普段はダメということで、市内でやるにしても夏休みが主になるんです。ここへ来て貰ってやらないとダメですから、今年は積極的に取り組みたいと思っています。去年は4月に開館したばかりで夏休みの行事はなかなか入れられなかったというのもあるんですが、その辺のアプローチもしないといけないと思っています。


全国に向けて情報発信を!

■岩井: 今は、全国の河川に関する、あるいは水環境に関するNPOも結構できているんです。そういう人たちも、先ほどの「魚道」の会議じゃないですが、年に一度くらいは、そういうのをやる時にここを・・・。

■河村: そういう時には、ここを考えてみて貰うようにはしているんです。

■岩井: それは、「魚道」の会議ですか?

■河村: 「魚道」の関連では、世界魚道会議ではなくて、「NPO法人魚道研究会」ですね。あと去年の10月でしたかには、全国の国土交通 省の環境課の係長研修(平成17年度河川環境研修)というのがありまして、ここで講義と実習をやりました。

■岩井: 川に関するNPOの皆さんが、この地域に集まる機会はあるんですか?

■河村: ええ、岐阜市内で毎年開催されている「河川環境メッセ」というのがあります。河川環境管理財団の支援をいただいているんですが、これには中部地域の主なところから出展していただいています。比較的人が集まるんですが、まずいことに、県の方が「ITメッセ In 岐阜」と抱き合わせでやれと言うんですね。そうしますと、平日開催にしないといけないんです。そのため小学校を大々的に動員することができないわけです。そこで、数校だけは学校を半日ほど休みにしてもらって来てもらうとか、発表会をやるとかしているんです。それを全面 的に来てもらえるようにするには、土日じゃないといかんと言っているんですけど、何回言っても、「抱き合わせだから、お金が無いから、普通 の日にせよ」と。それでも総合学習の成果を発表してもらって、そこで表彰したり、いろんなことはやっています。そういう状況ふくめ、情報は全部こちらでつかめてはいますが。

■中村(敏): 岐阜県の主催ですか?

■河村: 県と、岐阜県自然共生工法研究会の主催です。

河川環境メッセin岐阜2006


■岩井: なにせ、ここに施設がありますね。施設があり、実際に優秀な人たちがそこにいて、日々日常的にいろんな活動をしておられます。施設があり、人がいて、それも国土交通 省の事務所の関係、それから独立行政法人の土木研究所「自然共生研究センター」との関係、それと、県の関係がありますので、全国の中でぜひリーダーシップを発揮していただいて、全国に向けていろんな働きかけしていただくと良いと思います。

■河村: 夏休み明けくらいからは、かなり名前が知られるようになりましたね。ライオンズクラブの方々に団体で来ていただいて講演するとか、今、ちょっと体調を崩して入院されている和田吉弘先生(元中部女子短期大学副学長・NPO法人魚道研究会特別 顧問)にも顧問で来ていただいたりして、主に魚の関連を話をしていただいたり、研修会とかをやっています。土日は簡単なプログラムで、ワークショップも一般 公開しています。

■岩井: 川に関係したNPOの皆さんの利用状況はどんな具合ですか?

■中村(敏): 岐阜県内のNPOでは「長良川環境レンジャー協会」ですとか、中核的なところがリーダーシップ的な役割をして、「木曽三川を語るフォーラム」の事務局をやっていて、NPO相互の交流というか情報交換の場、その他いろんな活動の場として使っています。そういうところでも、さきほど言いました一連の活動の中で、ここで研究発表会的なものを開いたりしていますし、交通 の便の問題などはありますが、日常的には岐阜市内中心で活動している団体や人も、何かの機会でここに集まるとか、そのようなかたちでは使い始められています。

NPO法人 長良川環境レンジャー協会
木曽三川を語るフォーラム(木曽川上流河川事務所WEBサイト内)


ほんとうの体験とは、実際にふれること

■岩井: しかし、とにかく施設がすごいですね。

■河村: 関連施設が多いですからね。

■岩井: 素晴らしいですよ。さきほどの自然共生研究センターの実験河川。あれも面 白いですね。中村さん、今まで何度もご覧になっているんですか?

■中村(稔): 実は、今日がはじめてなんです。

■岩井: 案外、灯台下暗しで来られてないんですね。

■河村: なかなか、きっかけがないと・・・・。

■岩井: そうですね。誰しもきっかけがないと来ないもんですが、これだけの施設ですからね。できるだけたくさんの人に来てもらいたい気がします。今日、ご覧になって、どんな感じでしたか?

■中村(稔): 先ほど岩井先生がおっしゃったように、子どもたちには実際に触れさせなければダメですね。見ているだけでは・・・。私は今、総合学習の面 倒をみているんですが、最近の体験に来る子どもたちは、「触っちゃいけません」とか、言われているものですから。古い工法のゲートを展示しているわけなんですが、子どもたちに「触っていいよ」と言ったら、みんな喜んで触っています。触って、「厚いねえ」とか、「これはどのくらい厚みがあるんだろう?」とか、そういう興味がわいてくるのは、外から眺めているだけではダメなんです。だから、ここには素晴らしい施設があるのですから、ぜひ、手で触って体験できるものが欲しいですね。

自然共生研究センター実験施設概要(自然共生研究センターWEBサイト内)

■岩井: そういえば、ちょうど昨日、テレビの番組で「多摩川の水辺発見」でしたか、こんなにいろんな種類の魚がいますよと、そんな放送をしていましたよ。NHKだと思いますが、実際に、子どもといっても、小さい子どもではなく若い人も含めて、インストラクターというのか自然に詳しい案内するという番組です。多摩川を案内する、河口から中流から上流を。それで実際、魚を獲るんです。川の中に入って獲るとか、そういうことをやるんです。それで、案内タレントの人が、それはもうびっくりするんです。多摩川なんていいますと、あんな大都市の中を流れている川に、こんなに魚がいるのかって。それでまあ、もちろん映像なんかも駆使してはいますが、映像で見せるのも必要なんです。例えば、鮎の遡上時期に小さい稚鮎が群れて上っていくじゃないですか、そんなのは、その時期に来て見ないと見られないわけですから。だから映像もうまく使わないといけませんが、実際、川の中に入ってとか、そのような感じで、そうすると、みんなびっくりしますね。そういう体験、そういうのは、どうすればいいのか、僕はよくわからないんですが・・・。

■中村(敏): 大きいところではビオトープを中につくっているところもありますが、どんなことが体験できるかとなると・・・。

■岩井: 実際に入るということでしたら、実験なんかでも入るんじゃないでしょうか?

■河村: 入りますね。僕らは、実験でしょうがなく入ったりすることもありますが。(笑)

■中村(敏): 国営木曽三川公園でも、模擬河川だとか、「じゃぶじゃぶ池」とか、いろんな水に入れるような仕組みになっていますが、それが体験かというと、それはちょっと違うような感じですね。

■河村: それは、遊びに近いけれど。自分の手で川の中の魚を捕まえたということがほんとの体験ですね。

■岩井: 今、子どもたちはそういう体験をしていないのじゃないですか?

■河村: していないですね。普通 の川に行っても、まともに子どもたちがいないもの。

■中村(敏): 少なくなったというのは確かですが、長良川では水浴などをやっていますしね。

■河村: ああ、やっていますね。


志ある者たちの交流拠点として

■岩井: そういうふうな話になってきますと、ますますNPOの活動として・・・。

■中村(敏): ボランティアですね。

■岩井: そう。ボランティア的にやっていかないと、なかなか難しいですよ。しかし、ボランティア的にやるにしろ、そういう場所が要りますね。場づくりが必要なんです。ですから、そういう場所が、今、ここにできているかというと、もうちょっといろいろと実際に触れられるところが要るかもしれませんね。

■河村: そのあたりの工夫もかなりいります。

■岩井: しかしいずれにせよ、これからですから。実際にいろんなことをやりながら、少しずつ、いろんなことをやっていけばいいと思います。まあ、楽しみですね。

■河村: まあ、核はできているわけですから。

■岩井: 当面すぐに、というような何か所長にお考えはありますか?

■中村(敏): 現在はまだ、暫定的といいますか、一時的な整備で開館しましたので、今年の予算で若干、施設の整備を予定しています。

■河村: お願いして、順次改善、改良していく予定です。

■岩井: 案外、全国の人への広報が足らないとか、そんなことはありませんか?

■河村: いやあ、だんだんとですよ。ここへ来られなくてね、「隣までは来たんだ」とか、「隣というか、公園の中まで来たんだけれど、いったいどこにあるんですか」とか言う方もいますから。公園正門の案内板にも問題があるんですが・・・。

■中村(稔): なるほど確かに。私もこちらの西口から来たのですが、どの施設だろうと思いましたからね。

■河村: そのあたりのところも改善しないといけませんね。

■岩井: 一般の人が子どもたちを連れて家族連れで来るとか、子ども同士で来るとか、そういうのも当然いいんですが、NPOのリーダーであるとか、学校の先生であるとか、研究者であるとか、そういう人たちに働きかけていって、ここが交流の拠点になっていくといいなと感じますが。なにせ、これだけの施設があるんですから。

■河村: そういう目的で、大学の先生も河川環境がらみの方にはわりと来ていただいているんです。外国のそういう関連の人も視察に来ますしね。これもかなり増えてきて、パンフレットも今年は英文をつくらなければいけないかなあと、思っているんです。

■岩井: そうですね。小泉総理が観光立国宣言をされて、観光に力を入れようしているわけですね。まあ、入れ始めているのです。しかし、観光というのじゃないのですが、そういった海外の人の間で、日本の川を「体験したい」、「見たい」とかいうニーズが出ているという人がいます。ですから、今、先生が言われたように、海外の人にも来てもらうには、パンフレットもビデオなんかも英語バージョンがいりますね。あるいは国際会議みたいなものも、国際会議自体はここでできなくても、岐阜市内でやって、ここで見学会をするとかできるわけですから。日本河川のいろんな現場を見るといいましても、事例が散在していますから、ここはパッと河川環境楽園で全てを体・体感できるというのはどうでしょうね。

初代観光立国担当大臣・石原伸晃氏インタビュー(石原のぶてる事務所WEBサイト内)
川のおじさん「ビジター産業のすすめ」


■中村(稔): 世界ボート選手権とか、そういう体験ではやりすぎですかな。(笑)まあ、ここで体験というのはなかなか難しいでしょうけど。

■河村: 最近は、何か特色があれば、韓国や台湾の人も視察に見えるんですよ。

■岩井: 何か外国人にとって、日本の自然だとか、日本の文化とかあるじゃないですか、そういうものを理解するのに、日本の河川を見ることも一つの大きな役割を持っているかもしれません。

■河村: おおいに関係がありますからね。

■岩井: そうでしょう?お寺の庭園を見るのもいいんですが、日本の川でこういうところに来ますと、日本に対する感覚とかが違ってくるんじゃないでしょうか。東京や京都だけではない、そんな感じがするんです。河村先生、ご苦労をおかけしますけれど、ぜひよろしくお願いします。

■河村: いえいえ、こちらこそよろしくお願いします。

川のおじさんが提案する、まち・川づくりのNPO団体交流の場 juuu−net


魚道から見えてくる、世界お国事情

■河村: 公園の中では水郷地帯、ここらあたりよりも少し下流部のほうなんですが、木曽川水園を木舟で周遊もできるようになっているんです。実際には、土、日と、普通 の日は希望者があれば舟を出すんですが、結構乗ってここを見ています。まあ、梶原前知事が計画当時「アメリカテキサス州のサン・アントニオみたいなようにできないか」と言っていましてね。

■中村(稔): スペイン調の街並みとリバーウォークで有名ですが、ちょっと雰囲気が似ているところもあります。

■河村: それを言われたから、そういうところが、特徴になっていますね。

■岩井: 魚道の国際会議があったと言われたでしょう。あの時、県の河川課長が葛城君というのがいましたが、県会の先生方を連れて・・・。

■河村: そうそう。私も一緒に行きました。アメリカ、カナダへね。

■岩井: ああそうでしたか。それでその時、僕は彼に「行くんだったら、コロンビア川がいいぞ」と言いました。ボンネビルダムの魚道とかね、行かれたでしょう?魚道もそうだし、それから実験河川でいろんなことをやっていたり、工法も・・・。ちょっと、これは凄いですね。アメリカは、ダムの設置で減少が予想される鮭鱒などの水産資源を保護するために、とにかくエネルギーをかけてきましたからね。

「サン・アントニオ」フォトアルバム(benoa.net内)
ボンネビルダム
Bonneville Dam (Kenyon College WEBサイト内)
ボンネビルダム1937年に完成したワシントン州とオレゴン州の州境を流れるコロンビア川のダム。周辺に魚道研究のメッカとなっている実験施設があり、国営孵化場や大規模な魚道、実験施設を含む観光地となっている。
(右写真:USACE Digital Visual Libraryより)



■中村(稔): さきほど先生も言われたように、昔、川と人はとても近い関係だったんですけど、しばらくは離れていたでしょう?それが、河口堰の魚道をきっかけとして、みんなが川と接触するように変わってきましたね。川のことはよく知らなくても、魚道がいろいろ取り上げられて、魚が上るとか上らないとか関心を持つんですね。人が「魚道」に目を向けるようになって、必然的に川も見るようになってきたという感じがします。岐阜で魚道会議があったんですが、あれもそういうことで魚道を含めて川に関心が出てきたということだと思います。

■河村: 平成7年の「世界魚道会議'95」の時は、イラクの研究者が5人でしたか、来たいということになっていたのですが、直前に「イラン・イラク戦争」が始まり、それで行けなくなったと前日に連絡をもらったこともありました。残念でしたが、そうか、あそこもメソポタミアの関連があって、魚道もあるのだろうということでね・・・。あの頃は、まだそんなに魚道のことがわかっていませんでしたから。国もそうでしょうが、大きい「魚道」というのは、あんまりやってなかったでしょう?農林省のほうは、電力会社といろいろ作っていましたが。そういうことで、あれはいい勉強会でしたね。日本にとりましては・・・。

■岩井: やっぱり、アメリカはある意味で進んでいるんですよ。魚道関係も。それと、コロラド州デンバーの土木研究所みたいなところがありますね。

■河村: USBR、USGSとか。

USBR:U.S. Bureau of Reclamation/アメリカ合衆国開拓局(デンバー)
USGS:U.S. Geological Survey/アメリカ合衆国地質調査所(デンバー)


■岩井: 私はそこに行った時に、堰の魚道じゃなくて、あちらは舟運が盛んでしょう?カヌーが上り下りするというか、流れに乗って下ってくるわけですが、どういう構造にすれば安全かとか盛んにやっていました。僕はちょっとびっくりしたんですが。

■河村: あそこも縮小されて、ちょっと落ち目になってしまってね。ですが、割といい研究の集積地ですね。最初、私はコロラド大学の大学院留学中に行ったんです。行って四日目にあそこへ「研究費がもらえるからちょっと行ってこい」と言われて、「行って交渉して、お前の月給の出る研究費なんだから説明に行って来い」と言われて行ったら、ストでピケを張っていてなかなか入れず、苦労した思い出があります。

■岩井: そうでしたか。そういえば、あそこには、常に建設省の土木研究所から誰かが行っていたんじゃないですか?

■河村: そう、コロラド州立大学は元土研の須賀さんや山本幸一さんとか、来ていましたし、京都大学の岩垣先生の頃からずっと行っていました。

独立行政法人 土木研究所


■岩井: まあ、アメリカも結構進んでいる面 があり、現時点で考えればちょっとどうかわかりませんが、日本もその後だいぶ進んでいますね。

■河村: まあ、同じレベルにはなったと思いますが、やはり、巨大ダムを作っているから巨大魚道とかがありますし、川は大きいですし。こっちは十分の一しかありませんからね。

■岩井: 魚といっても、サケだとか大型の魚ばかりで、こちらは小型のアユなどですから・・・。

■河村: ですから向こうはアユみたいな小さいものは、相手にしていなかったようです。

■岩井: しかし、魚の種類なんかも日本はものすごく多いわけでしょうから、魚道の種類も多いんですよね。生態系は、これからますます大事になってきますし、先生、期待させていただいていますのでこれからもよろしくお願いいたします。所長も頑張ってください。今日は本当にありがとうございました。

川のおじさん川を語るその2「中部の川におもう」
今回の座談を資料として書き下ろされた岩井國臣の随筆。
(河川プレビューNo.131 春季号 河川風土記1.関東に掲載)

 

 

   
top 特集