【旅のはじまり】
平ぺったい大地と低い空の間に色づき始めた田んぼの黄色。緑にふちどられ蛇行する 涸沼川、風に波立つ銀ねず色の涸沼。自然護岸は沼の周囲に1キロ足らずを残すだけでゴミが目立だつ所もあるが、水に囲まれ、生活の中に舟が当り前にある風景には不思議な懐かしさがある。海抜ゼロメートルの涸沼 は海水と淡水が混じる汽水性の沼で、日本最後の新種発見ともいわれる「ヒヌマイト トンボ」はここで発見された。生息する魚類も多彩、ヤマトシジミ出荷量 全国第4位の貴重な水域だが、水上レジャーも盛んで、遊漁券があれば誰でも釣りやシジミ採り が楽しめる。

【涸沼へのアプローチ】
茨城町から涸沼へ(茨城町商工会ホームページ)
大洗駅から涸沼川・涸沼方面 (大洗町観光課ホームページ)

【涸沼川】
那珂川水系涸沼川 那珂川の支流 (一級河川)
源流:茨城県笠間市七会村国見山(391.7m)
長さ:64.50km
流域面積:458.8km2 人口 約16万人
備考)全川のうち最下流の約8kmが国の直轄区間、その上流の涸沼を含む残り区間は県が建設・管理している

【涸沼】
海跡湖 標高0m 水深 6.5m(平均2.1m)
面積 9.35km2 岸延長20km
流入河川:涸沼川はじめ若宮川、渋川、桜川、才川、大谷川 
流出河川:涸沼川
関連市町村:茨城県東茨城郡茨城町・大洗町、
      同県鹿島郡旭村 
人口:約6万6千人 (茨城県企画部統計課資料・H16年)

※旭村は2005年10月、鉾田町・大洋村と合併、鉾田市となった。(2006.3 記)

涸沼沿岸の干拓地の稲田
蛇行する涸沼川
ゴミ捨て禁止の看板
リゾート地風景


行く前に、知っておきたい。涸沼基礎知識
涸沼は涸沼川の一部?
涸沼側が涸沼を通過する
涸沼の水は上流と下流から?
涸沼の下流のシジミ舟風景
那珂川の水が牛まで運んで?
昔ながらの水神様
【これで納得。涸沼と涸沼川の関係】
一般には独立した汽水湖として知られる「涸沼」だが、これは昭和59年に定められた湖沼法※で涸沼が湖沼に類型されたことが要因らしい。一方、国や県の見解によれば「涸沼は涸沼川の一部」だそうだ。「涸沼」は、笠間市に源を発し大洗で那珂川と合流する「涸沼川」が途中で沼になっている部分ということになる。
※湖沼法とは・・・
正式には湖沼水質保全特別措置法で特に対策の必要性の高い湖沼を国が指定。現在全国で10の湖沼がこの指定を受けている。


【涸沼の水はどこからくるのか】
涸沼から流れ出た涸沼川下流河口付近までの約8キロ区間を地元の人は下涸沼川と呼ぶ。ここを伝わって海水が潮の干満で出入りするため、沼の内部も汽水域になっている。昭和40年代までニシンが豊富に獲れていた沼の塩分濃度は、季節によって変わるが高い地点で海水の半分、低い所で10分の1くらい。干満の差が激しく、満潮時には下涸沼川の流れが完全に逆になるほどで、涸沼までオットセイが遡った記録が残る。潮といっしょに那珂川の水やドロが運ばれるので、「70%は那珂川の水」ともいわれる涸沼には、上流涸沼川などの流入河川だけでなく、下流にも水源があるわけだ。

【那珂川からのもらい水】
太古、久慈川から分断され、本来は含まれていなかった上流域を併せることになった 那珂川だが、全水量を排出するには河口部が狭すぎた。那珂川が洪水になって一日も すると、海へと逃げられない水が涸沼川をさかのぼり、地形的に遊水地機能をもつ涸沼へと逆流。 涸沼に上流からの氾濫とは異なるオーバーフローによる水位上昇が起こる。平成10年の台風4号では、那珂川支流余笹川流域にある那須町の牧場から牛の死骸が涸沼にまで流れ着いたそうだ。大きな台風ともなると那珂川の淡水が一気に流れ込むため、汽水域にしか生息できないヤマトシジミが全滅寸前となることも多い。今も浸水はしばしば。いざという時に備えた舟や土嚢が目につく。

【涸沼と干拓のこと】
国民的要望のもと実施された干拓事業は、二期にわたり昭和43年に完成され98ヘクタール(環境省湖沼調査より)が水田となり、地域の経済や暮らし、自然のありようを大きく変えることになった。涸沼川と涸沼への流入出周辺に広々とした田んぼが広がる。


貴重な汽水域 涸沼は生きている

涸沼の風景 川と海からの影響が交錯し、複雑な自然環境をもった汽水域に起こる現象でメカニズムが解明された例は少ない。「様々な要因の中で絶妙なバランスを保ち生きている」と汽水域を語る文献もあった。浅く広い汽水域は、流れ込む豊富な栄養塩とふりそそぐ太陽エネルギーを糧とするプランクトンが豊富で、これを餌とする魚介類が海からも川からも集ってくる。多彩 な食料が容易に得られる水域として人間と関わってきた歴史も長い。
近年、涸沼では広大な藻場と棚が支えていた環境が変化し、富栄養化によるアオコの発生、透明度や水質の低下、魚の減少などが生じている。原因の究明と共に、涸沼の特性を最大限引き出す共生への模索が始まった。干拓や 埋め立て、可動堰などで全国の汽水域が消えていく中、今だ海とつながり、漁業で生 活ができる「涸沼」はほんとうに貴重な汽水域なのだ。

水運の中継地だった涸沼

江戸時代、東北や那珂川流域からの物資を江戸まで運ぶ安全確実な方法は、難所・鹿 島灘沖を通る海路ではなく、「内川廻り」と呼ばれる那珂川河口那珂湊〜涸沼川〜涸 沼〜北浦〜利根川ルートだった。問題は涸沼から陸路がはさまれること。そこで通 船 税などの増収を当て込んだ水戸藩が松並勘十郎に掘らせたのが、「紅葉運河」(涸沼 西岸の海老沢から巴川流域の紅葉までの約10km)と「大貫運河」(涸沼川から大洗町 大貫までの約1km)。いずれも失敗に終わり、明治に入って大久保利通 が涸沼流入河 川の大谷川を鉾田川に結び北浦につなぐ国家計画に着手したが暗殺で幻となった。旭村に切り通 しの跡が残る。運河の計画は江戸時代から明治中期までに30回以上試みられたが実現しなかった。

参考文献:
 「涸沼の環境資源」茨城大学 大嶋和雄
 「汽水域の化学」高安克巳編・「汽水域の科学」講師グループ著  
    http://www.apionet.or.jp/~dojou/mizube.html
情報提供:
 国土交通省常陸河川国道事務所水戸出張所、茨城県水戸土木事務所



参考サイト
【涸沼と涸沼川関連機関】

国土交通 省関東地方整備局常陸河川国道事務所
茨城県
茨城県河川課
茨城町
大洗町
大洗町商工観光課
茨城大学

【涸沼の全体像】

クリーンアップひぬ まネットワーク
涸沼辞典(茨木町のWebサイト内)
第4回湖沼調査 詳細データ(環境省自然環境局生物多様性センターのWebサイト内)

【環境】

「第3回ひぬま環境フォーラム」
 シンポジウム 「望ましい涸沼の環境を考える」 (クリーンアップひぬまネットワークのWebサイト内)
平成14年度公共用水域及び地下水の水質測定結果 について(茨城県のWebサイト内)
「環境いばらぎ」 (茨城県生活環境部環境政策課提供)

【生きもの】

魚のすみかとしての涸沼」 (クリーンアップひぬまネットワークのWebサイト内)
うなぎネット
日本のシジミ漁業 ―その現状と問題点―
ヒヌマイトトンボ (ひぬまネットワークのWebサイト内)

【レジャー】

いこいの村涸沼
総合マリンスクール「フォワード」 
涸沼辞典「涸沼を釣る」(茨城町のWebサイト内)

【歴史】

勘十郎堀(茨城町のWebサイト内)
歴史的に見た人と涸沼のかかわり (ひぬまクリーンアップのWebサイト内)
水戸・日立の八景 田中昭氏作成資料(「きらら」のWebサイト内)

【全般】

環境情報案内・交流サイト「EICネット」(国立環境研究所提供)  
河川・湖沼・海の環境用語(国立環境研究所提供の EICネット内)
「湖沼水質保全特別 措置法」(国立環境研究所提供の EICネット内)
常陸の川づくり「那珂川」(国土交通 省常陸河川国道事務所のWebサイト内)

 

 


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