涸沼の土産話



涸沼川下流をのんびり下る

涸沼・涸沼川・那珂川・太平洋の切っても切れない関係が、ちょっとは見えてくるかもね。と、大洗や涸沼に12年来足げしく通 い続けている、東京在住の写真家で物書きの中川祐二さんが二人乗りカヤックを貸してくれた。そんなわけで思いがけず実現した川下り。

▼スタート地点
涸沼橋付近、掘割(内の方に船を引き込めるよう掘ってある。写真左手)から涸沼川右岸にでたところで準備をする。周辺には海路運ばれた海外の魚介などを貯蔵した倉庫が残る。
準備の写真 涸沼橋付近よりスタート
「泳ぎはできるの?」と心配しつつ笑顔で見送ってくれたおばあさん。




いよいよ河口まで2kmほどの小さな冒険のスタートだ。水面 は船の油が浮いて、透明度もないが、水中が見えないおかげで怖くないのサと、抜群の安定感でカヌーはすうーっと滑り出した。 見回せば古い水産会社の倉庫跡の風景がかつての賑わいを思わせる。岸に係留されている小舟がちらほら。もう少し上流にはシジミ漁の船がたくさん出ているのだが、このあたりは塩分濃度や川底の質が違うので捕らないそうだ。時折見かけるのは護岸べりの釣り人ばかり。 釣果を聞こうと近寄っていくと、「しっしっ」と追いやられる。

カ印水産の冷凍工場
▲スタートまもなく、ひまわりが印象的に映える、カ印水産の冷凍工場。ここでは蒸し蛸をつくっているそうな。

織姫塚

「織姫塚の伝説」
深い淵で深みに入った人は、百ひろのワカメに巻かれ、九穴アワビに吸い付かれて死んでしまうと語り告がれている。水戸黄門が退治しようと潜った伝説も残る。終戦直後、潜水夫が潜ったがいくら潜っても川底が見えず恐ろしくなって上がってしまったそうだ。

 

プカリプカリ、冷蔵庫とすれ違ってびっくり。河口のほうから潮にのって遡ってきたように見えるが、どこにたどり着くのだろう。また下げ潮にのって、河口へ下っていくのか。小さなゴミも流れつつたまっているところがある。表面 上はわかりにくい潮流の複雑さをゴミに見せつけられるようだ。

ほとんどがガチガチのコンクリート護岸。ところどころ、新しい工法で石が積んであるところもある。道を掃除していたおばあさん。「海まで〜?やめておきなぁ。危ないよぉ。」難所という河口部のいろんな事故を見聞きしているんだろうなあ。大水でここまで水が出たと、自宅の塀を箒の柄でさす。大水の時に備え舟が用意してあるそうだ。

右手に木々が茂り、自然のまま残っている岸辺があり、不思議とそちらに惹かれて漕いでいく。伝説のある織姫塚のあたりか。

気持ちよく風を受け進んでいくと、急にひらけて那珂川との合流部に出た。高台の「巖船の夕照(水戸八景)」の対岸は江戸時代に水運で栄えた那珂湊の古い街並み。遠くに幟が二本たっているのは、那珂湊の町で毎年盛大に行われるという八朔祭の関連だろうか。ヨットやプレジャーボートが並ぶマリーナもある。 もうほとんど海。なめれば塩辛い水。河口部に懸かる海門橋の姿は赤色でちょっとドラマティックだ。狭い河口にはテトラの残骸に複雑な波が立ち、近づきがたい。那珂湊港の川側の水門 (下写真参照)が見える。 川下りはここまで。大きな水族館が大海原を見て建っていた。

※注意:潮の流れと水位 の変化、風などにより、川下りの 所要時間、危険箇所、難易度が変わってくるので、要注意。 河口の中央テトラ残骸の脇を抜けて海へ出るのは厳禁。

那珂川の河口へゴール  
河口   水門
▲那珂川河口から海を見る
河口部は狭く、中ほどにテトラの残骸のようなものが見え、複雑な波が立っている。漁船も通 らない難所。左手は那珂湊港で、古くは那珂川河口を利用した河川港だったが、今は外港となって直接海に面 している。右手は大洗海岸。
▲那珂湊漁港水門
那珂湊港の川側には水門が設けられ、川から港内への土砂流入の防止と船舶の安全をのために開閉を管理されている。川の中にあるマリーナの船舶はこのルートを使い外洋にでる。

 




涸沼に集うおもしろ人間たち

艇庫子どもの夢、大人の夢を応援する
「アイアンキッズ支援隊


ゴールまで車で迎えに来てくれた中川祐二さんと、ヨットや手づくりウッドカヌーの艇庫がある掘割近くの元冷凍倉庫の中にある「夢工場」へ戻る。ここが中川さんを「オカシラ」と慕い仰ぐ「アイアンキッズ支援隊」の本拠地なのだ。支援隊は、地元の恵まれた自然に子ども達が親しむきっかけをつくろうと大洗町が始めた「アイアンキッズクラブ」(少年海賊隊)の応援を目的に、平成7年結成された。中心となったのは、前年の文部省補助による「父親の家庭教育支援事業」に参加したお父さんたちで、アウトドアジャーナリズムの草分けでもある「オカシラ」の助力を得ながら、キッズの応援以外にも独自な活動を行ってきた。

●なぜ海老の冷凍倉庫が夢工場なのか・・・
大洗沖合いは、黒潮と親潮がぶつかる「潮目の海」。九十九里から買い付けに来るほどセグロイワシの漁が盛んだったが、地元で獲れる魚は量 も種類も不安定で水産加工に結びつかない。魚介類を輸入して涸沼橋周辺の冷凍倉庫に舟で運んで貯蔵し、需要や値動きに合わせて出荷、解凍加工するようになった。大洗港の完成で今は空き倉庫が多い。

昨夜夢工場をのぞいたら、メンバーは子ども達と大洗の海でやったキャンプイベントから戻ったばかり。早くも使った鍋釜や濡れ物は片付けてしまったらしく、自分達でつくったサウナで汗を流していた。「おっと失礼」。腰にタオルを巻いて行き来する贅肉のない日焼けした中年男たちがまぶしい。改めてテーブルについてみると、みな個性的であったかくて熱くって、でも臍を曲げたらテコでも動かないに違いない面 構え。そこへ女の子がおずおずと入って来た。昨夜テントに忘れ物をしたらしい。大人と子どもというより、ガキ大将が子分に対するような短いやりとりだけで、女の子は安心や反省、じゃあどうしたらいいかという秘策までもらって帰っていった。支援隊の連中の少年ごころは全然さびていないのだ。

夢工場は梁山泊の趣。大洗在住者を中心とした異業種異分野が集っているので、何にせよ問題解決が早いのが強みだ。自由闊達の風と見えて、己を律する厳しさがどことなく漂う。イベント企画ではオカシラが遊 びの種付け師。氷上ワカサギ釣をしよう!となればオカシラの一言が呼び水になって人間カーリング、氷上綱引きや水泳自由形、腹滑り距離競技などのアイディアがぼんぼん出てくる。

●夢工場の面々が思うこと・・・
「子ども達を清掃イベントや体験学習に参加させて環境教育に結びつける考え方もあるけど、もっと大事なのがその後。体験した場面 をどう日常的に継続し、どう成長につなげるかってことじゃないかな。」 「子どもの前に、まずどう大人を巻きこむかが肝心なのよ。 自然の中で遊ぶ術を知らずに育った30代の親たちも増えたしね。やっている大人が楽しくなきゃ続かないです。いかに子どもをダシにして大人が遊ぶか、いかに子ども達をギャフン !と言わせるかという企画で子ども達とぶつかってます。大人も子どもも汗をかかなきゃあ、一人前にはなれません。」


●今年の夏もおつかれさま!サンバで又ね・・・
夏の最後を飾る支援隊の行事「八朔祭」。 オカシラを見下ろすくらいに成長したアイアンキッズの卒業生たちも訪ねてきて大にぎわい。最後はサンバでパレード。「俺、いつも泣いちゃうんだ」。かの中川さんをして、惚れさせ通 わせる人と人の出会い。

●水質浄化の特効薬は「水ガキ」・・
環境庁のデータで平成9年度全国湖沼の部ワースト第4位(COD9.7mg/l)だった涸沼。 ワーストからは脱却したが平成15年度水質はCOD9mg/l。もしみんなが涸沼にふれて遊んで、どうしようもなく好きになってしまったら?水質への意識だって違ってくる。水絶滅 危惧種「川ガキ」「海ガキ」。総称「水ガキ」を増殖しよう!水ガキだった人が役人になり、学校の先生になったら世の中変わるよ。


●活動の原動力・・・
大洗の川漁師の家に生まれ、舟でヒヌマを自由に遊んでいた頃が原体験。ニシンがのぼる昔のヒヌマに戻って欲しい。やっぱりどうしてもふるさとが好きってこと。

オカシラ 装備 サウナ
▲充実の一日。サウナ上がりにくつろぐ、オカシラこと中川祐二さん ▲ありとあらゆる道具や装備が揃う夢工場内部。どれも丁寧に使い込まれている。

▲全裸の中年おとこたちが入れ替わり立ち替わりのサウナ小屋はみんなの手作り。

 

アイアンキッズ支援隊のホームページ
IRONKIDS(少年海賊隊)とは
青少年と地域活動について「アイアンキッズ支援隊」(茨城県webサイト内)

→アイアンキッズクラブのイベントに参加した子どもたちに手渡される小さな修了証。
修了証

多彩な体験型講座には目移り必至
「NPO法人大洗海の大学」

2003年、大洗町をキャンパスに、アイアンキッズクラブなどの活動や生涯学習課が実施してきたプログラムを総合した「大洗海の大学」が誕生した。国籍年齢問わずいつでも誰でも学生になれるし、サポーターにもなれる。浜、風、波、渚、川、緑、釣りの七学部では地元の自然を生かしたユニークな体験学習が可能。自分が何者かをはっきりと教えてくれるのが「自然」なら、鍛えてくれるのも「自然」。大学だからといって入試はない。「楽しい」「気持ちがいい」「面 白い」ことしか絶対やるものか!というのが学長の公式発言。もちろん支援隊も全面 的サポート、中川さんが総長だ。

大洗海の大学
特定非営利活動法人(NPO)設立認証一覧 「大洗海の大学」(茨城県webサイト内)

→他人に貸与したり譲渡してはいけないが、見せたり自慢するのは大いに結構!大学の 協力・支援者の証明書。

 

 

サポーター証

参考文献:「大洗歴史漫歩」郷土史家・大久保景明氏著

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