ドナルド・キーンの明治天皇
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タイトル: 769 . ドナルド・キーンの明治天皇
お名前: 岩井國臣
投稿日: 1/2(06:52)
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明治天皇という本について
私は先に、「劇場国家にっぽんと天皇制」という文書の中で、「否定すべきは徹底的に
否定して初めて・・・・肯定すべきものが肯定できるのである。この国際社会において
わが国のあるべき姿(かたち)を明らかにし、その上で、明治以降戦後までの皇室につ
い
て否定すべきは徹底的に否定するという作業が急がれなければならない。それを抜きに
して、憲法改正の論議はいたずらに空回りするしかないであろう。」と述べた。これで
はちょっと抽象的過ぎて判りにくい。具体的な問題について申し上げておいたほうがい
いだろう。・・・・・というわけで、一言だけ先の文書を補強しておきたい。
暮れもいよいよおしせまった31日の朝、「劇場国家にっぽんと響き合いの地域づく
り」と「劇場国家にっぽんと天皇制について」という拙文を書き終わり、又資料整理も
おおむね終わったので、この正月に・・・・今評判のドナルド・キーンの力作「明治天
皇」を読もうと思って、近くの本屋にそれを買いに行った。ところが上野毛の本屋にも
等々力の本屋にもその本は売り切れで無かった。仕方なく二子玉川の高島屋まで買いに
行ったのだが、「明治天皇」は今それほどの評判だ。大変うれしいこと
だ。・・・・・・
しかし、私はちょっと気になることがある。本の帯だ。下巻の帯はこうある。「天皇。
われわれ日本人を今日へ導いたのは、この指導者だった・・・。祭り上げられるだけの
存在から、いつしか一国を指導する自信に満ちた統治者へ・・・・。」・・・・確かに
そうだ。確かにそうだし、この著書が明治という激動の時代を描ききったキーン史学の
金字塔だという帯の評価を間違っていると言うものでもない。私が気にするのは、キー
ンもこの帯を書いた人も・・・・天皇制をあまりにも不用意に取り上げてはいない
か・・・・ということだ。これでは、天皇制について論理的に肯定できないのではない
かということだ。
私は、明治という時代は、或いは明治という時代の法律制度も含めた・・・・すべての
事柄というものは、歴史的な必然性をもっているし、すばらしかった。明治の先人たち
は本当にすばらしかったし、その頂点に明治天皇が居られるということは間違いない。
し
かし、私が今言いたいことは、現在の価値観というかこれからあるべき日本国の姿に照
らしたときどうなるというのかということだ。「一国を指導する自信に満ちた指導者」
という姿が、西田幾多郎のいう「無の有」に当たるのかということだ。当たらないだろ
う。私の立場は、「場所の論理」の立場である。「場所の論理」から天皇制を積極的に
肯定しようとする立場である。そして憲法改正論者でもある。
先にも述べたが、皇室は明恵の「あるべきようわ」以来権力から分離され、権力的な行
為は行えないようになった。武家社会の時代、皇室がある意味で「物の中に没する」よ
うに仕向けられた。しかし、明治以降戦後まで皇室の権威と政府の権力は深く結び付
き、
皇室は到底「無の有」とはいえない存在であったのではないか。もちろん現在は違う。
元に戻ったというか、政府の権力とは完全に分離されて、再び「物の中に没する」存在
になった。私は思うのだが、現在は、戦前の姿とは違う・・・・その「物の中に没す
る」存在というものが多くの人びとの共感を呼んでいるのではないか。現在、それが私
たち日本人の「共通感覚」として育ってきているのではないか。皇室には確かに己を空
しゅうする姿があり、それが故に私たち日本人の理想となり得る。しかし、歴史的にそ
うであったというのはやはり言い過ぎで、それでは戦前の姿を肯定せざるを得なくな
る。否定すべきは徹底的に否定して初めて・・・・肯定すべきものが肯定できるのであ
る。この国際社会においてわが国のあるべき姿(かたち)を明らかにし、その上で、明
治以降戦後までの皇室について否定すべきは徹底的に否定するという作業が急がれなけ
ればならない。それを抜きにして、憲法改正の論議はいたずらに空回りするしかないで
あろう。
私は、最近、憲法改正を急がなければならないということを痛切に感じるようにってき
ているが、もともと憲法改正論者である。私は、憲法改正にあたって、私の理想とする
天皇制、世界に通用する天皇制というものを是非実現したいと考えている。そういう立
場からすると、天皇制に関する論評はあまり不用意にしてほしくないということだ。今
はこれだけのことを申し上げ、ドナルド・キーンの著書「明治天皇」については、これ
を精読の上然るべき評価をしたいと思う。
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