[特集ワイド2]「宮崎駿ワールド」は、なぜこれほど受けるのか

2001.11.21 東京夕刊 3頁 総合 写図有 (全2012字) 

 

 ◇「千と千尋の神隠し」興行収入日本一に/ジブリ美術館は年内チケット完売

 宮崎駿(はやお)監督の映画「千と千尋の神隠し」の興行収入が260億円に達し、「タイタニック」の持つ日本記録259億円を抜いた。「三鷹の森ジブリ美術館」(東京都三鷹市)のチケットは飛ぶように売れ、トトロなどのキャラクターグッズやビデオの売れ行きも好調。なぜ“宮崎ワールド”はこれほど受けるのか。【小国綾子】

 

 ◇リピーター

 「千と千尋の神隠し」の動員数2000万人、興行収入260億円という日本記録は、邦画部門の記録をもつ前作「もののけ姫」の動員数1420万人、興行収入193億円をはるかに上回る。「千と千尋」は今年末から来年初め、香港、台湾、シンガポール、フランスで公開される。米国でも公開の予定だ。

 スタジオジブリによると、ヒットの背景にあるのがリピーターの存在だ。「『もののけ姫』もリピーターが多かったが、今回の『千と千尋』はそれを上回る。2度ならず3度、4度と見る人もいるようです」という。

 「宮崎駿の<世界>」の著書がある評論家、切通理作さんは「最近の作品は、一度では見切れないほどの動きの多さやキャラクターの数が『もう一度見たい』と思わせる。これまでの宮崎監督の映画では、最後に登場人物の後日談が名場面風に描かれた。しかし『もののけ姫』では暗転した画面にスタッフ名。『千と千尋』の最後でも登場人物のその後を思わせる絵はない。これが映画に参加できる余白を観客に与え、もう一度体験したくさせる」と分析する。

 

 ◇親も子も

 宮崎映画のもう一つの特徴は、世代を超えた人気だ。宮崎監督自身「僕の狙いは話題になることでなく、今の子供たちが親になった時、自分の子供に見せたいと思う映画を作ること」と語る。「千と千尋」の封切り直後に6歳と3歳の2人の娘と見に行った東京都文京区の女性(36)は「上の娘は主人公の体験を自分のことのように深く受け止めていた。下の娘にも印象に残ったようだ。私自身は懐かしい気持ちになった」。次作について宮崎監督は「5歳でも理解できるような根源的なものを作りたい」と話している。

 

 ◇映画以外も

 映画だけではない。10月オープンの「三鷹の森ジブリ美術館」は、年内のチケットがすでに完売。1日2400人の定員は「明石市の花火大会事故のような事態を避けるため」(スタジオジブリ)に設けた。1本4500円のビデオも売れ続ける。「となりのトトロ」は200万本以上。「もののけ姫」は400万本。「トトロ」のテーマソングは童謡として定着し、ぬいぐるみはロングセラー。こんな「小道具」が、数年に一度の映画公開の時期にかかわらず、人々の心をつなぎ止めているのかもしれない。

 しかし、スタジオジブリは「売れ過ぎ」には困惑気味だ。「映画との出合いは一期一会。手元にビデオやぬいぐるみを置くより、年に一度映画に触れるだけの方が想像力も広がる、と宮崎先生も言っていますから」

 

 なるほど、宮崎監督は偉大である。

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 ◇この人気、どうしてですか?−−記者会見でのご本人のお答え

 「千と千尋の神隠し」が興行収入日本一となった記者会見に宮崎駿監督=写真=も出席し、質問に答えた。監督の話は次の通り。

 

◇次作について

 2004年夏がチャンスかと思う。いま日本には明るい話題がない。時代とちゃんと向かい合って、自分たちの言ってきたことが、うそじゃないと主張できるか。自分たちの思ったモノを作れるかどうか。それに向けて残りを生きようと決めた。

 

◇米国公開について

 「もののけ姫」の米国興行はひどい数字だった。あの時、米国では、残酷だ、という批判もあった。残酷だと言われてもいい。だから僕は(興行会社の)ミラマックスの会長に「絶対カットしない」と言い張った。向こうは「成功したいのなら絶対にカットしろ」と言って、半分ケンカになったぐらい。(「千と千尋の神隠し」が)別に米国で成功しなければいけないわけじゃないでしょう? 逆に言えば、こんな映画を日本でこれだけ支持していただいている、その方が僕は大事だと思う。

 

◇2000万人が見た理由

 本当にわからない(笑い)。ナウシカ、ラピュタ、トトロとジブリで作ってきたけど、映画のみでは全然ペイしなかった。後がないといわれて作った「魔女の宅急便」で初めて、興行収入だけで資金が回収できた。ジブリをブランドだと言う人もいるけれど、ブランド力だけで映画に人が来る、という甘い考えは僕は持っていない。結果は、他の人が分析してくれればいい。でも、結果の分析からは、映画は作れない。僕は子供たちや人々の心の中のものに誠実に向き合うしかないと思う。うんとシンプルな、もっともっと根源的なものを作らなければいけないと思っている。

 

■写真説明 トトログッズ販売店の「どんぐり共和国」=東京駅の八重洲地下名店街で、宮本明登写す

 

毎日新聞社

 

 

 

 

 

 

 

 

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