7、場所の分節化(その2)

 

 私は先に、場所について、<存在根拠(基体)としての場所>のほかに、<身体的なものとしての場所>、<象徴的な空間としての場所>、そして<論点や議論の隠された所としての場所>の三つがあることを紹介し、まず、<身体的なものとしての場所>について勉強した。ここでは、残りの二つの空間について触れておきたい。

 

 <象徴的な空間としての場所>・・・・、これは聖なる空間としての場所のことである。先に述べたように、固有環境は、ただ単に生物学的・生態学的な意味だけで存在しているのではなく、個人の意思との関係で心的な意味でも重要な役割を持っている。ロコスの働きがあるからである。先に述べたように、<存在根拠(基体)としての場所>は身体的実在(身体性)によって分節化される。

中村いわく、『すなわち、空間あるいは世界は、ただテリトリーとして単に外部に向かって他のテリトリーと境界づけられるだけではない。空間あるいは世界は、それと同時にテリトリーの内部でも、そこに棲んでいるもののいろいろな欲求に応じて、内部的に分節化されている。そしてとくに人間の場合には、そのような空間の分節化は、実際的な欲求の次元だけではなく、象徴的な欲求の次元でも見いだされる。<象徴的な空間としての場所>とは、このようなかたちで分節化された空間あるいは世界のことにほかならない。濃密な意味と有意味的な方向性を持った場所と言ってもいい。この<象徴的な空間としての場所>をもっともよく示すものは、世俗的な空間と区別された意味での聖なる空間、つまり宗教的、神話的な空間である。聖なる空間は、象徴的に特別な意味を持った核となる地点の布置を含みつつ、そのまとまりを持った全体性から宇宙論的性格を帯びるのである。』・・・・と。

 

では、<論点や議論の隠された所としての場所(トポス)>とはなにか。これも中村の説明を紹介する。

 

『<論点や議論の隠された所としての場所(トポス)>は、古代レトレックでいうところのトピカ(トポス論)の持つ問題性をもっと広い観点から捉えなおしたものである。もともとアリストテレスではトピカとは、自分の行おうとする議論はいかなる種類の事柄にかかわるか、どのような話題から始めるべきか、を決めるものであった。キケロによれば、隠された場所がわかれば隠されたものがたやすく見出されるように、十分な議論をしようとすれば、その場所つまりロクス(トポス)を知らなければならない。こうしてトピカは発見の術とも呼ばれ、政治や法律の具体的な事例についての議論に不可欠なものとされた。

 このトピカは蓋然性の上にのっとった議論であるため、永い間、とくに近代世界に至って、不確かなものとして退かれることが多かった。しかし、近年になって、具体的な事例や問題の考察と議論において、適切な論点を発見することがいかに必要であるか、また、現実の多面的な豊かさを考えると、蓋然性を受け入れることがどんなに正確であるか、が見直されてきている。必然的な真理のもとづく議論はたしかに正確ではあるが、そうした議論はいくらしたところで、問題の持つすべての局面を考察したことにはならないからである。つまり、正確な推論の出発点となる前提は、えてして単に現実の一局面しか表わさず、したがってそこからの結論もおのずと限られたものになるからである。

 

『けだし、<存在根拠としての場所>も<身体的なものとしての場所>も、<象徴的な空間としての場所>も<論点や議論の隠された所としての場所>も、そのいずれにおいても、<場所(トポス)>の観点は、近代の知の、原子論的・機械論的な発想、均質空間、一義的厳密性と相反したものであり、それらによって排除されたものであった。

・・・(中略)・・

なるほど、自然科学の分野でも、場(フィールド)が物理学における電磁場や生物学における発生学的な場の問題としてあらわれている。また、哲学の分野でも、後期フッサールの<生活世界>やその一つの展開であるハイデガーの<世界的内在>などのかたちで場所にかかわることは問題にされてきた。

しかし、現在において、場所の問題をもっとも根底から哲学の問題としてとり上げ、それをとおして論理そのもののラディカルな転換を企てたのは、ほかならぬ西田幾多郎であった。西田の場所論は論理主義的な徹底によって、場所とは無でなければならないとして、場所についての具体的・現象学的な考察の行われる余地のほとんどないかたちで、無から、それも絶対無といわれるものから、実在と世界を照射することとなる。』

 

「場所の論理」が今私たちのかかえる諸問題をどのように解決し得るのか、私は、その点について重大な関心を持ってはいるのだが、ここでは焦点を絞って「劇場国家にっぽん」との関係を問題にしたい。先に「知のトポス」について述べたが、次に、「劇場国家にっぽん」と「知のトポス」との関連性を整理しておきたい。

 

 

次は、「劇場国家にっぽん」と「知のトポス」!

 

Iwai-Kuniomi