奥田澄雄

はじめに

IT革命の本質は、個人が使える料金で地球全域のコンピュータ網が出来たこと により、個人が世界のさまざまな情報源からダイレクトに情報を入手できる従来のマスメディアが報じないオリジン情報も得られるようになる)個人が世界規模で情報発信できる (個人が自己を主張できる)個人が世界規模で連携できる(人の頭脳の連鎖反応を無限大に引き起こす) ようになるということであり、その結果として、個人が主体的な情報パワー(=社会を 支配するパワー)を持つようになるからである。この変化は、結局は人の活動する全ての場面に関係するが故に、最近の世の中の変 化は、この ことに関連して起こっているものが多い。しかも、この変化は、産業革命により常識的となった「規格化、同時化、中央集権化」に象徴される価値観を逆転する変化なので、社会全般について、 時代の過渡期の大きな混乱が生じている。

 

● 新世紀の予兆から見えてくる近未来の社会像  最近の社会全般にわたる変化の予兆を取り上げ、それらから起こるであろう近未来の社会像を推察 してみよう。

・従来の大組織のメディアとは別のダイレクトルートの膨大な情報が伝えられるようになりつつある筆者は一昨年に「アップル副社長のWORLD PC EXPO基調講演から見えてくるインターネットビジネスの未来像(1) −ごく近い将来、地球全域から、無数のインターネット  デジタルTV放送局が出現して本当に見たい番組が見られるようになる?」:http://world-reader.ne.jp/ibr/okuda-990914.htmlで近い将来、個人や小規模組織により、無数のインターネットを通じたデジタルTVのようなメディア(注:最近、始まった従来のTV局によるBSデジタル放送のことで はない。余談だが、筆者はBSデジタル放送は急速な拡大は出来ないと思う。従来方式TVに比べ、革新的に興味のあるコンテンツも放映されていないのに、誰が、数十万円もする受像器を買うのだろうか?  はたして、今のBSデジタル放送は、ラジオからTV、白黒TVからカラーTVへの変化ほどのインパクトはあるのだろうか? 筆者には今のところそのようには思えない。また、将来やろうとしていることも、ほぼ全て、近い将来、高速のインターネット上で実現されてしまうのではないだろうか?)の出現を予想したが、 この動きは、すでに米国では始まりつつある。この動きは、今後、地球規模で拡大し、今後 の地球市民 は、従来のメディアが伝えない、しかし、かなり重要なダイレクト情報なども入手できるようになると思われる。つまり、為政者は、国民の知らない裏側で、国民の意志に反するような動きは出来なくなる傾向が強まるということである。

(中略)

 高齢者が生存中、安心して有意義に過ごせる社会システムが求められる  今後の高齢者人口の増大は、高齢者が老後を有意義に暮らしたいという欲求を満たす各種事業の伸展を促すものと思われる。これは、国の施策としても、最重要事項  の一つであり、今後、様々な工夫が、行われていくものと思われる。また、今後、  国としても、この方面に就業人口を創り出す努力がなされようし、これは、今後の余剰人口の有力な受け皿の一つになるものと思われる。このような動きを助長するためにも、インターネットは大きな力になりうる。例えば、助力を求める人と、支援活動をする人とのマッチングなどは、インターネットにより非常に力となるであろうし、常時接続インタ ーネットシステムにより、一人暮らしの老人なども、遠くに離れた友人や家族と相手の画像を眺めながら、 ゆっくりと話をするなどということも可能になろう。低廉な遠隔医療システムなども実用 化されるに違いない。  さらに、もっと重要と思われるのは、高齢者が、動けなくなるまでは段階的に労働  できる社会システムであろう。つまり、高齢者が動けなくなまでは、希望すれば、その肉体的能力に応じて、報酬が得られる高齢者就労システムである。これなども、定額な常時接続インターネットシステムが全国に行き渡れば、 高齢者が全国に分散して、インターネットを通じて様々な仕事の機会を得られるように出来るのではないだろうか? 最近、農業回帰のような傾向もあるから、自分の消費する農産物などを生産しながら、希望に応じた量の仕事をするなどと言うシステムが考えられないだろうか?  65歳を過ぎたら、本人の希望があっても、一切仕事をする機会がない社会というのは、逆に心寒い社会なのではないだろうか? 人は世の中の役に立っているという意識を失うと衰えるのも早く、結局は、半病人のような老齢者を増やすことになるのではないだろうか?  またインターネットを活用して高齢者の知識欲を満たすための社会大学なども可能 であろう。この大学の教師は、それぞれの経験による知識を持つ高齢者がお互いに 教え会うなどというシステムも考えられるであろう。

・地方の魅力が増し、より適切な人口配分が行われる高速道路網の整備、新幹線網の拡大、インターネットの全国規模での安価な定額常  時接続などの進展で、今後、地方の魅力が復活す るのではなかろうか。高速道路な  どは、国際標準に比べてその料金があまりに高すぎるのは今後、大幅に改善の必要があろうが、特に、インターネットの全国規模での安価な定額常時接続の実現は、近い将来に実現可能であり、これにより、個人としても企業としても、地方の利便性が増すものと思われる。  また、最近は、地方分権が時代の要望であるから、今後、中央政府としても、急速にその実現に向けて、舵取りを変更せざるを得ない状況であり、この面でも、地方  の魅力が復活する可能性が大きい。国のそれぞれの地方を、いろいろな特色により魅力を持たせるという政策の進め方は、ヨーロッパの国々のやり方が、非常に参考になるように思われる。新世紀は、これらの方向付けにより、再び地方に適切な人口配分が行われる方向に進むのではないだろうか。

 

人々の新しい体験をしたいという欲求が強まる(旅やインターネッ トサーフィンは、その一つの実現である。)  衣食住が満たされた今、今後、人々の欲望は、「新しい体験」 に、ますます、向かうように思われる。新しい体験の最たるものは、未知の場所への移動、つまり、旅 行であろう。その意味で、海外旅行などの需要は、ますます、高まるのではないだろうか。また、休暇期間の延長は、時代の趨勢であろうから、今後は、日本でも、比較的安価に過ごせる長期滞在型の旅行施設が必要となってくるのではないだろうか。実際、多くの海外の国を歩いてみて、比較しても、日本の景観は、素晴らしいところが沢山あるから、発想を転換して、より旅をしやすい環境を工夫すれば、国内の観光業も復活できるのではないだろうか。また、擬似的な体験ではあるが、インターネットサーフィンは、やはり、もう一つの新しい探検への扉であるとも捉えることが出来よう。  (筆者は、IT化による余剰人員は、結局 レジャー・文化・福祉などの三次産業に吸収される方向に社会が変化していくのではないかと予想している。)

・環境問題・リサイクルが重視される  地球を有限なものと捉えざるを得ない程に、人類の活動が大き くなってしまった今後の世界では、環境問題やリサイクルが重要視されるのは、時代の趨勢であろう。  家電品のリサイクル法制化の動きなどもあり、これからは、人々の意識は、ますま  す高まるであろう。  また、インターネットの活用により、資源の無駄のない利用、リサイクル活動の支援などが、ますます進展するようになるであろう。

 

・新しい技術が人々の生活に大きな影響を与え、人々の考え方も変える。(知能ロボット・バイオテクノロジーなど)これらの新技術は、新世紀には、いろいろ実用化され、さらに人々の生活を、便利 もものに変えて行くであろう。特に、AIBOやHONDAの人型ロボットに代表されるようなフレンドロボットとでもいうべき知能ロボットが、近い将来、人々の生活に  大きな影響を与えるようになるものと思われる。また、フレンドロボットは、インターネットと結びつくことで、距離空間を超越して、さらに興味深い応用がなされるものと予想される。

・教育システムの抜本的見直しが行われる  昨今の教育の荒廃や少年犯罪の増大は、国の将来にとって大きな問題となっているが、これなども、現在のシステムは、産業中心時代の社会ための「規格化、同時化、中央集権化」に都合の良い人間を育てるためのシステムだったのであり、やはり、今後の新しい時代に適合する教育システムを構築しなければならない時代に入ってきたと言うことであろう。もう一つは、経済の高度成長期を通過して、国民全体の物事の判断が、あまりにもお金に偏ってしまったことに根本原因があるように思われる。こちらの問題の解決は、結局は「あらゆる大人が襟を正すこと」から、始まるのではないかと感じる。

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 本稿の最後に、予想される近未来の各業界の変化について、まとめてみよう。

・情報・通信業   海外の情報・通信業が参入してくるインターネットなどマスコミ以外に有益な情報が増大する   従来のTV・新聞の地位は相対的に低下する通信業は完全に自由化される

・広告・宣伝業インターネットに広告の主体が移動するインターネット向けの新しい広告会社が多数出現するTV・新聞の広告を扱っている大広告会社の地位が相対的に低下する

・建設・不動産業公的事業は各過程で情報の公開が行われるようになる   住宅の自己所有へのこだわりが弱まる 不動産価格は利用価値相当となる

・製造業   消費者の意向をより重視した生産が行われるようになる   購入・販売のかなりの 部分がインターネット上に移動するきめ細かい経営管理・顧客管理が可能になる   外部の企業とのイン ターネットによるネットワークが出来る

・物流業   よりきめ細かい物流管理が可能になり、物流コストが下がる   インターネット物販が増えるため、物流量は増加する(小口の配送が増える)

・流通業   対面販売から、インターネット通販へとかなりの部分が移動する   海外流通大手の進出により競争が激化する様々な資材の流通ネットが出来る

・サービス業   あらゆるサービス業にインターネットが利用される消費者が便利になり価格も下がる ・観光業   インターネットを通じた販売額が増大する   人々の旅に対する欲求はますます高まる   長期滞在型の施設が増える   観光業に多くの就労機会が生じる

・農林・水産業   きめ細かい情報入手が可能になり生産・漁獲の効率が向上する   農産物、水産物のインターネット市場が整備される   農産物・遠洋漁業の物品の価格が国際価格に近づく

・金融業・証券業   他の業種からの本業界への進出が起こり業界地図が変化する   今までのような横並びの事業姿勢は通用しなくなる企業の質を見抜く能力が要求される   効率と個性が重要になる   インターネット取引の与信機能付加事業 に進出する

・商社   従来の商社機能の多くは、インターネット上の他の業種の事業に吸収されていく有望事業への投資会社的な性格を強める   インターネット取引の与信機能付加事業に進出する   インターネットを利用したB TO B事業に進出する   様々なインターネット関連事業に進出する ・高齢者向け事業 老後を有意義に過ごすための事業が増加する   老人向け事業に多くの就労機会が生じる

 

(2001/1/1 原稿作成)


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Iwai-Kuniomi