紫式部日記
むらさきしきぶにっき
紫式部の日記。作者が仕えた一条天皇の中宮彰子(上東門院)の宮廷の日常と,その間の作者の感懐を記したもの。
記事は1008年(寛弘5)7月ころから10年1月15日の敦良(あつなが)親王誕生50日の祝賀に及ぶが,断続的で,年次によりまた事件による粗密の差がいちじるしい。日次(ひなみ)の記録に成ったものではなく,各行事や儀礼に際しての覚書などを材料として,10年7月ころ,比較的短期間にまとめられたらしい。後半には寛弘6年か7年か不明の個所や,道長との贈答歌といわれる部分など貞も多い。また現存本には見えないもので《源氏物語》の注釈書《幻中類林(げんちゆうるいりん)》に《紫式部日記》の歌として引くものがあり,現存本は,原本がかなり変型あるいは縮小したものかと疑われる。
宮廷儀礼・風俗に関する精細な記述のほか,消息文と呼ばれる部分には,同僚の女房に対する忌憚(きたん)ない批判が見え,一方,沈痛清澄の世界観照もうかがえて,その文学的価値も高い。 今井 源衛
(c) 1998 Hitachi Digital Heibonsha, All rights reserved.