紫式部日記の消息文

 

源氏物語を書き上げた紫式部は、それまで手許に残されていた材料を整理して、紫式部日記を書いた。その紫式部日記の中に「消息文」という部分がある。これは消息文、つまり手紙の形をとりながら紫式部の心境を述べたものである。

 

その消息文の終わり近くに、注目すべきこういう部分があり、ここから紫式部の明白な浄土信仰への傾斜がみられる。すなわち、

 

「自分のような罪深い人間には、思い通りに本意が達せられないかもしれないし、今まではそれを案じてぐずぐずしていたが、しかしもう年令も年令だから、これ以上老いぼれて、目がうとくなって、経もろくに読まれなくなるようなことにならない先に、今のうちに経を習い、さらに出家もしようというのである。」

Iwai-Kuniomi