トライアッド

 

 

 期せずして、「和の原理」である「3の原理」とでも言おうかそういうものを取り上げた本が2冊出た。ひとつは河合隼雄の「神話と日本人の心」(2003年7月18日、岩波書店)であり、もうひとつは井沢元彦の「3の霊力に迫る」(2003年8月10日、旅行読売出版社)である。前者は命がけの本であり、後者は気楽な本である。気楽なほうから紹介していきたいと思う。まずは気楽に聞いてもらいたいので、「和の原理」とか「3の原理」という言い方を改め、とりあえず「グウチョキパーの原理」としておこう。

 

 3年程前に出雲大社の地下から古代の極めて古い柱の遺構が発見された。記憶にある方もあろう。かって大林組のチームが出雲大社の原型をコンピューターで復元したことがあるが、ものすごい高さの木造建築であったことを私も鮮明に覚えている。もちろん、奈良の大仏殿よりはるかに大きい世界最大の木造建築である。今は遺構が残るだけで実物はないのだが、これほどの木造建築は今まで世界で造られたことがない。かっての出雲大社は、歴史上、世界最大の木造建築であった。何故そんな馬鹿でかい神社がつくられたのか。井沢元彦は、その謎を解くこそ日本の歴史の真実を探ることだといい、次のように述べている。

 『私はこの謎を解きたいと思っている。ごくごく簡単にいえば、出雲大社というのは大国主命の神殿である以上、本当の最高神である天照大神(アマテラスオオミカミ)との間の「国譲(くにゆず)り」、つまり大国主命と天照大神の「話し合い」の精神を象徴しているからこそ、日本「最大」の建築物でなければならなかったのだ。

 この「話し合いの精神」のことを、日本人は伝統的に「和」と呼んできた。聖徳太子も17ヵ条憲法第1条で、「和を以って貴(たっと)しとなす」といっている。日本は「和」によって構成されている国なのである。』・・・と。

 

 そうなのだ。「和」である。「和の原理」は、「グウチョキパーの原理」である。2は対立の数字といわれ、3は調和の数字といわれている。二人が争えばどちらかの顔がつぶれるが、三人だと三人とも顔が立つようにルールを決めることができる。グウとチョキとパーの役割さえ決めればいいのだ。「グウチョキパーの原理」が働いて「和」が保たれる。井沢元彦の著書「3の霊力に迫る」では、日本三景とか日本三大霊場とか、日本三○○といった名物を数多く紹介し、日本人が如何に三にこだわっている民族かを浮き彫りにしようとしている。ベストテンというのも最近はよく見かけるが、日本のいわゆる名所や名物はまあ三○○である。ベストテンとかベストファイブというのはおおむねいちばんから順番がついている。日本人はそういうのをあまり好まない。まあいい加減といえばいい加減だが、一番にならなくて良いのである。三本の指に入ればそれで十分。そういう民族である。三つ一組のものがあってグウとチョキとパーの役割を決めれば、先に述べたように、誰がいちばんかでもめることはない。しかし、実際は、必ずしもそういうグウチョキパーの役割を決めなくても良いのではないか。三つ一組のものがあれば、誰もがグウチョキパーをイメージするので、もはや文句は出ないのではないか。私たちの感覚からいえば、まあ三本の指に入ればそれで十分なのである。井沢元彦が言うように、日本人には三の霊力が働いているのである。

 

 ところで、井沢元彦は、それがいちばん言いたいのであろう、上記のように、出雲大社のことに触れながら、『日本は「和」によって構成されている国なのである。』と述べているが、そのことを神話の構造論から明らかにしたのが河合隼雄の力作「神話と日本人の心」である。見事な本である。河合隼雄には変な思い込みがあってせっかくの名著も竜頭蛇尾に終わっている感もないではないが、全体として見事な研究成果である。さすがである。まず河合隼雄が長年取り組んできたそのすばらしい研究成果について・・・・、その核心部分を紹介し、そのあとで・・・・、最終章の批判を行ないながら・・・・私の見解を述べたいと思う。

 

 

 三つ一組のものを英語でtriad(トライアッド)というが、河合隼雄は次のように言っている。『一、二、三、という数について考えてみるとき、一はまさにはじまりであり、唯一である。それが二となると、分離、対立、協調、均衡などの様相が生じてくる。事実、「二人の創造者」というのも、神話によく生じるテーマである。それが、三になると、二の様相に相当なダイナミズムが加わってくる。「三頭政治」は世界の歴史のなかで、ときに出現している。人間は二項対立的にものごとを考え、処していくのを好むがそこに第三の要素を入れ込むことによって、二項対立的な構造にダイナミズムを与えるのである。そのような意味のみならず、二つの対立的分類より三つの分類のほうが、全体をより立体的に構成できるという考え方もある。二次元より三次元的に考えるほうが、より豊かなイメージをもつことができる、というわけである。』・・・・と。そして、そのトライアッドという切り口で古事記に書かれている神話を分析し、神話の構造を明らかにした。そして、そのことによって、日本が「和」によって構成されてきた国であることを主張している。それでは、河合隼雄の著書「神話と日本人の心」にしたがって、日本神話の構造について勉強するとしよう。

 

1、日本神話の構造・・・中空均衡構造

2、国家の統治構造について