宇宙との響きあい

 

 

  私は、去8月1日に名古屋で開催された「グランドワーク東海」主催のシンポジュームで、「宇宙とのひびき合い」と題する20分ほどの私のスピーチの最後を次のような言葉で締めくくった。

 『 時代が変わるためには人間が変らなければならない。では、人間が変るためにはどうすればいいか。哲学的な言葉でいえば「純粋生命」とか「絶対無の場所」とか「純粋な述語性」という言い方になるのかもしれないが、判りやすくいえば「生きているということ」でいいかと思うが、(人間が変るためにしなければならない大事なことは)「生きているということ」に対する感動であり、そのための「場づくり」である。グランドワーク、それは、「ひびき合いの場づくり」である。 』

 私は、「宇宙との響き合い」とか「響き合いの場づくり」という言い方が気に入っている。私の秩父の山小屋の・・・いろり小屋は「響き小屋」と名付けようと思っているが、人々とのコミュニケーションも、要は、響き合いですからね。なんぼ響き合いのない会話をやっても仕方がないですからね。響き合いなんですよ、響き合い。宇宙との響き合いなんですよ。それでは、去8月1日に名古屋で開催された「グランドワーク東海」主催のシンポジュームで、「宇宙とのひびき合い」と題する20分ほどの私のスピーチの全文を掲載しておきます。

 

 

司会

それでは続きまして元(財)河川環境管理財団理事長,岩井國臣さんに「宇宙とのひびきあい」と題しましてご講演をお願い致します。岩井さんの詳しいプロフィールにつきましてはお手元にございますプログラムをご覧頂きたいと思います。お待たせ致しました。それでは岩井さんよろしくお願い致します。

 

岩井

下垣さんの歌,素晴らしかったですね。涙が出て止まらない,そんな感じだったと思います。「長崎の鐘」を歌われましたので、ちょっとここで、広島の・・・「金のトランペット吹き鳴らせ」という草野心平の詩を読ませて頂きたいと思います。

 

平和祈念像に寄せて「金のトランペット吹き鳴らせ」

 

天心の三日月の上に  幻でない母と子の像 これこそ永遠の平和の象徴

童子よ母の愛につつまれて  金のトランペット吹き鳴らせ  天にも地にも透明な

平和の調べ吹きおくれ  どんな未来がこようとも  頬いっぱいふくらまし

No more Hirosimaの  金のトランペット吹き鳴らせ 

 

1978年8月 草野心平

 

 私は、もともと建設省でございます。広島に中国地方建設局というのがあり、今整備局というふうに名前が変わっておりますが,そこの局長を丸三年足かけ四年やっておりました。ほとんど知られておりませんが,実は、あの原爆ドームは私ども建設省の旧庁舎でございました。もちろん内務省の時代でございますが,そこに私たちの諸先輩が勤務しておりました。昭和20年の8月6日に・・・・あのようなことで、一瞬のうちに皆さん亡くなるわけであります。原爆ドームの下に・・・それらの方々の・・・殉職の碑があります。毎年、8月6日になりますと,そこで、局長主催の・・・ささやかではありますけれども慰霊祭をやっておるわけでございます。亡くなられた方々の霊を慰め,そして平和な国づくりに邁進するということを誓うわけであります。来週また私も・・・、その慰霊祭に参る予定にしておりますが,私は、平和というものはどういう事なのか,平和の原理は何か、ということを考え続けているわけでございます。なかなかわからないところが多いわけでありますけど,ただ単に平和,平和と言うだけで平和が来るというわけではありませんから,その原理というのは何なのか,これはやっぱり哲学から考え直さないといけないのではないか。いろんな本も読んだんですけど,なかなかピンとくるものがない。最近の哲学者はさぼっているのではないかということを少し書いたこともありますが,まずは我々仲間でそういう平和の哲学を考えようじゃないか・・・・というので,哲学の道研究会というものを作りました。素人の集まりですから専門的に哲学をやるわけにもいかない。京都に哲学の道というのがありますけど,それになぞらえて哲学の道研究会というのを作ったんですね。第1回目は梅原孟さんに講師になっていただき講演していただきました。そしてその後、何回目であったでしょうか・・・・、さらには、今をときめという表現がいいんでしょうかね、中村雄二郎という講演者がおられまして,世界的な哲学者だと思いますが,その方をお呼び致しまして,講演頂いた訳です。その中村雄二郎さんの講演が終わりまして,「流れ川」で飲んだわけでありますけども,その時に・・・・、中村先生に、21世紀というのはどういう世紀になるんでしょうか・・・、と聞いたんです。もはや21世紀になった訳でありますけど,果たして21世紀というのはどういう世紀になるんでしょうかね,皆さんどう思われますか。

 21世紀・・・・、この世紀ですね。まぁそれを聞いた訳ですよ。そしたら中村先生が,さあぁ俺もわからんけども、たぶん・・・・、たぶん、リズムの時代じゃないかと言われる訳なんですよ。リズムなんですよ。リズム。それで今の垣さんの歌を聴きながらですね,私もまさにこの21世紀はリズムの時代だなぁということを改めて感じた訳であります。

 

 私この講演を伊貝さんから頼まれたのが,正式に頼まれたのが,5月の初め頃だったと思うんですけど,その時に演題をどういう題にしようかなと考えました。最初に下垣さんがふるさとの歌を歌われるということを聞いておりましたので,それじゃぁ下垣さんの歌を引き受けるような形で・・・・「宇宙とのひびきあい」というテーマでしゃべらしていただこうかなということで,おおそれた題を決めさせて頂いた訳でございます。先ほどの草野心平という方は「いわき」の方でございますが,ご存じだと思いますけども,蛙の詩人と言われております。蛙。先ほどの「朧月夜」に出てきますね,難しい言葉がいっぱい出てきたと思いますけど,蛙の鳴く音(ね)という言葉が出てきますが,松尾芭蕉の有名な俳句で蛙の俳句があります。「古池や蛙(かわず)飛び込む水の音・・・」。蛙と松尾芭蕉とがこう一体になって蛙も松尾芭蕉もまさにこの古池の中にとけ込んでしまって,そこに1つの宇宙というものができあがっているんだろうと思いますね。そういう中でカワズ,カエルがピョンと飛んでチャポンという音がするんだろうと思いますけど,おそらく松尾芭蕉にしてみればですね,そこにポチョンじゃなくてドボンという大音響と共に宇宙とのひびきあいがですね,起こっているのではないかというふうに思うんです。もう1つ・・・、同じ年に、松尾芭蕉が作りました俳句で,「名月や池をめぐりて夜もすがら」・・・という俳句があるんですね。これもそうなんです。9月の名月の時に・・・・、煌煌(こうこう)と輝く満月の下で・・・・庭の池の周りをグルグル・・・何度も何度も歩いていると・・・・そのうちに我を忘れてというか、まさにその風景に解け合うというようなことになっていくんだろうと思います。そこに深い感動というものが出てくるのだと思いますが,そもそもそういう感動が問題なのです。下垣さんの歌を聴いて涙が出てくるような感動,それから松尾芭蕉が俳句を詠んだときの感動,そういう感動というものがどうやっておこっているんでしょうかね。それが段々・・・・哲学みたいな話になってくる訳ですけど,人間の心の中に大脳の中に,脳の中に,意識野というものがあります。意識というのは5感,第6感というのもありますけども,目でみたり,耳で聞いたり,鼻で嗅いだり,それから味覚や接触もありますね。5感でものを感じるわけですけども,その感じる一番の元ですよね,神経細胞の元ですね,その意識を感じる元を・・・・哲学ではですね、<意識野>或いは<意識の野>というんです。意識野の世界,要するに神経細胞のニュートロンのようなレベルでのお話です。そこですべて感じる。音もそうです。ですから・・・・・下垣さんのあの素晴らしい音も・・・・結局は意識野に届くんです。最後に・・・、届くんです。皆さんの意識野に届いている訳です。松尾芭蕉がそういう場所で,そういう素晴らしい場所で蛙の動きを感じる。あるいは自分の動きなどとその場所とが一体になって,ある種の感動を感じる。全部、意識野の話でございますから,結局、哲学的に言えば,そういう感動の元は同じ事らしいです。それで中村雄二郎のリズムの話になります。中村雄二郎さんは、形はリズムだとおしゃってますけど,結局はリズムなんです。

 

今日は、国づくり,地域づくりみたいな話です。私の関心もそこにある訳ですけど,場所ですね,国づくりとは、結局、場所づくりです。暮らしの中の地域づくりということでありますから,場所なんです。ところで・・・「場所の論理」というのがあります。

 日本の哲学というのは,西田哲学と田辺哲学から始まって,今なお脈々とその2系統があるんだろうと思います。中村雄二郎さんは西田哲学であるし,田辺哲学はこれまた私が今尊敬している中沢新一の哲学につながっているんだろうと思います。その西田哲学に「場所の論理」というのがあるんです。そのことと中村雄二郎の「リズム論」とは全く一致するのだろうと思いますが,最近出た本で・・・,清水博という方の「場の思想」というのもそうですね。清水博の「場の思想」はごくごく最近出た本です。東京大学出版会から出ておりますので,もし興味のある方は是非ご覧頂きたいと思います。この清水博さんというのはですね,生命関係学の権威者です。昔は分子生物学といいましたが、もちろん最先端の科学なんです。生命学というか分子生物学というか分子レベルで生命の神秘というものを研究するまさに最先端の科学なんですけど,その権威者が・・・、そういう最先端の科学の研究をやりながらたどり着いたのがこの「場の思想」という思想、つまり「共生の論理」なんですよ。それが先ほど私が申し上げました・・・・中村雄二郎の「リズム論」,西田幾多郎の「場所の論理」と基本的には同じことなんでございます。意識野という世界において全く同じことなんです。

 そういう考え方からいきますと・・・・、やっぱり一番大事なのは,響き合いなんですね。響き合い。私の話なんかはあんまり響き合いがないと思いますけど,下垣さんの歌と皆さんの心のなかで響き合いがあった訳です。だからこう涙でてくるような感じ,感動がある。そう感動というのは響き合いですからね。人々との響き合いというものもありますし,私がこれから申し上げたいのは,「場所の持つリズム性」ということなんです。場所。感動を受けるというか・・・・、ある種のなんかこう・・・何かを感じる場所というのがありますよね。そういう何かを感じる場所、心に何かが残る場所というのをやっぱり作らないけない。それは、実際に、そこに花を植えたり,木を植えたり,少し小道具的な仕事もやりながらする・・「場所づくり」というのもあるでしょうし,或いは何んにも使わないで、金もかけないで、自分の心の中でひとつの場所のイメージをつくっていく・・・そういう「場所づくり」というのもあるでしょうね。

私は金かけずに・・・、自分の趣味でございますけど、パソコンの中にひとつの場所というものをつくって,それを皆さんにパソコンで・・・、インターネットでもって,見て頂くということをやっている。これもひとつの「場所づくり」でございます。西田幾多郎の「場所の論理」、あるいは中村雄二郎の「リズム論」からいきますと・・・・、場所にはいくつかの種類があるのです。

 その一つは,人間がそういう場所がないとどうしても生きられない・・・そういう場所ですね。畑だとか,あるいは,魚を捕る漁場だとかもそうですね。そういう場所がないと食べ物が採れないわけだから・・・我々は生きていけませんね。そういう我々が生きていくためにどうしても必要な場所というものがありますよね。それから,自分の身体の延長線上としての場所というのがあるんです。私は京都生まれでございますけど・・・小さい頃「スイバ」という言葉をよく使いましたが、スイバという言葉はわかりますか?自分が大好きな自分の秘密の場所ということですかね。トトロの場所とかですね,そういう秘密の場所みたいなものは皆それぞれ心の中にありませんか。ふるさとを思う。それはやっぱりあるんですよ。自分の身体の延長線上としての場所というのがあるんですね。

 それからもう1つ大事なことは聖なる場所という,神社とか仏閣は全部そうだと思いますが。そういう神社仏閣みたいじゃなくても・・・・、私が言う・・・・「宇宙との響き合い」ができる宇宙とのひびき合いを感じる場所場所というのがあるんですね。場所についてはまだあるんです。自分の主義主張というものを説明していくための場所というのがあるんですけど,私が今ここで今申し上げたいのは「宇宙との響き合い」です。

 それで,もう時間がありませんので先ほど言いました清水博の「場の思想」という本を見ながら今日の演題と結びを申し上げて終わりにしたいと思います。21世紀型新しい時代ということだろうと思いますけど時代が変わるためには人間が変わらなければならない。では人間が変わるためにはどうすればいいのか。それは哲学的に・・・難しい言葉で・・・純粋生命だとか絶対無の場所,空だとか無、まあいろんな哲学的ないい方があるわけでありますけど,まあごくごく判りやすく言えば・・・・、生きているということに対する感動・・・。人間が変わるために,これから我々人間が変わるためには・・・・、生きているということに対する感動・・・・。そのための場づくりである。今日の講演会はグラウンドワーク主催ですけれど,グラウンドワーク・・・・,それは「響き合いの場づくりである」・・・というふうに結論づけさせて頂きまして,私のつたない話を終わらせて頂きたいと存じます。ご静聴誠のありがとうございました。

 

 

 

司会

岩井さんどうもありがとうございました。

以上をもちまして第1部メッセージコーナーを終了させて頂きます。さて,ここで少しお時間を頂きましていくつかお知らせをさせていただきたいと思います。まず初めに,再来年2005年に開催されます2005年日本国際博覧会 愛・地球博のボランティアセンターのご紹介をさせていただきたいと思います。皆様にお配りしております資料の中にこういった表紙に地球の絵が描かれたパンフレットが入っているかと思いますが,こちらをご覧頂きながらお聞き頂きたいと思います。

皆さんももうすでにご存じだと思われますが,再来年2005年3月25日からここ愛知で国際博覧会,愛・地球博が開催されます。この愛・地球博は国際博覧会の150年の歴史において日本では1970年に開催されました大阪万博以降実に35年ぶりに開催される国際博覧会でもあり,また,21世紀最初の国際博覧会でもあります。この記念すべき国際博覧会,愛・地球博では新たなチャレンジとして市民の参加を大きく取り入れていこうと考えています。このパンフレットでご紹介しています,愛・地球博ボランティアセンターは博覧会協会と連携しながらボランティア自身が自発的に運営する独立した組織です。愛・地球博のボランティア活動では誰もが楽しく参加でき,ここ愛知から21世紀の新たなボランティア像を世界に発信し博覧会終了後も地域に継承されるそんな活動を目指しています。今日ご来場頂いた皆様方にもボランティアをはじめ,国際博覧会の新たなチャレンジでもあります市民参加に多くの参加をして頂きたいと思います。この愛・地球博ボランティアセンターについて詳しいことは本日・受付におります愛・地球博ボランティアセンターのスタッフにお尋ね頂きたいと思います。よろしくお願い致します。続きましてもう1つご案内したいと思います。今度はこちらのパンフレットですね。表紙に大きな木のイラストが描かれたこちらのパンフレットをご覧頂きたいと思います。これは,今月29日に名古屋で開かれます‘MICHIBUSHIN’全国大会のご案内です。従来行政にまかせきりだった全国各地の道づくりまちづくりも,地域住民がしっかりと参加し公の担い手としての責任を担い,行政との対話と共同を重ねながら進めていく社会活動に変わろうとしています。そうした社会活動のエネルギーを鎌倉・室町時代から使われ,実践されてきた「道普請」という言葉に求め,21世紀の公共性や公共事業のあり方を問う国民的な流れにしていこうと全国各地で「道普請シンポジウム」が次々と開催されてきました。そして去年,「第1回みち普請全国大会」が札幌で開かれ,そして,いよいよ今年はここ名古屋で全国大会が開かれることになりました。今回の大会では「近代日本の風景と土木」と題しましてスライドを交えた基調講演が行われるほか,「美しい生活圏とは何か」と題しましたパネルディスカッションも行われます。このパネルディスカッションの模様はNHKのBSフォーラムで放送される予定です。8月29日金曜日場所はホテルグランコート名古屋です。参加のお申し込みの締切りは今月11日月曜日まで定員は300名となっております。本日は会場の受付コーナーにて参加お申し込みの受付を行っております。詳しくは受付におりますMICHIBUSHIN全国大会スタッフまでお尋ね下さい。

それではここで10分間の休憩をさせて頂きたいと思います。第2部トークコーナー「国づくりへの住民参画」は15時40分からはじめさせていただきます。よろしくお願い致します。

 

Iwai-Kuniomi